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山鹿語類 / 士道・詳器物之用

されば飮食の器は高して下のけがれを除き、奴僕の手を以て口にあつる處に不令中が如き是也。况や貴人の前にすゝむるの器は、高衝にのせて、其盛物を高くす。卑賤の輩屈伏して手を出して取るに利ならざらしむ。是不得已して人に非禮の形あらしめざるの制也。諸色如此と可心得。たとへ玩器たりと云とも、銘を記し語をちりばめて、人是を汚さしめず。見るときは則語をさとり、久しく持するときは則戒るに至らしむ。故に一切の器物みだりに紛失して狼藉たらしめず。殊に聖人の名ある文書反古等は、一紙と云ども塵に交へて汚さしめず。况や書籍文筆聊是をみだりならしむべからざるなり。

新字:されば飲食の器は高して下のけがれを除き、奴僕の手を以て口にあつる処に不令中が如き是也。況や貴人の前にすゝむるの器は、高衝にのせて、其盛物を高くす。卑賤の輩屈伏して手を出して取るに利ならざらしむ。是不得已して人に非礼の形あらしめざるの制也。諸色如此と可心得。たとへ玩器たりと云とも、銘を記し語をちりばめて、人是を汚さしめず。見るときは則語をさとり、久しく持するときは則戒るに至らしむ。故に一切の器物みだりに紛失して狼藉たらしめず。殊に聖人の名ある文書反古等は、一紙と云ども塵に交へて汚さしめず。況や書籍文筆聊是をみだりならしむべからざるなり。

書き下し

されば飲食の器は高して下のけがれを除き、奴僕の手を以て口にあつる処に不令中が如き是也。況や貴人の前にすゝむるの器は、高衝にのせて、其盛物を高くす。卑賤の輩屈伏して手を出して取るに利ならざらしむ。是不得已して人に非礼の形あらしめざるの制也。諸色如此と可心得。たとへ玩器たりと云とも、銘を記し語をちりばめて、人是を汚さしめず。見るときは則語をさとり、久しく持するときは則戒るに至らしむ。故に一切の器物みだりに紛失して狼藉たらしめず。殊に聖人の名ある文書反古等は、一紙と云ども塵に交へて汚さしめず。況や書籍文筆聊是をみだりならしむべからざるなり。

現代語訳

だから飲食の器は高くして下の汚れを避け、召使いの手が口に当たる所に触れないようにするのがこれである。まして貴人の前に進める器は、高坏に載せて盛り物を高くする。卑しい者がかがんで手を出して取るのに都合が悪いようにする。これはやむをえず人に非礼の形をさせないための制である。さまざまな物もこのように心得るべきである。たとえ玩び物の器であっても、銘を記し言葉を刻んで、人に汚させない。見れば言葉を悟り、長く持てば戒めとなるようにする。だから一切の器物をみだりに紛失させて散らかすことがない。とりわけ聖人の名のある文書や反古(書き損じ)などは、一枚であっても塵に交えて汚させない。まして書籍や筆墨は、少しもみだりにしてはならないのである。

解説

本章は、器の形そのものが非礼を防ぐ仕組みになっていると説く。食器を高くし、貴人への器を高坏に載せるのは、下の者が手を伸ばしにくくして非礼の形をとらせないためである。玩具の器にも銘を刻み、見るたびに戒めを思い出させる工夫は、殷の湯王の盤の銘などに見られる古い伝統である。聖人の名のある紙一枚も塵に交えないという書物への敬意も、学問を重んじた素行らしい。現代でも、身の回りの道具に理念や戒めを添えることは、日々の構えを整える助けになる。

この章句が説くこと

器物非礼銘書籍敬威儀

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