甲陽軍鑑 / 品第十一
縱へば番匠か大和國ならの大佛殿を立るに、二尺·三尺のかねをもつて立て、二間四方のらいさき堂をも右のかねにて仕る、すこしき備を立て、大人數には組合せよからん、大備へに組み其陣にて用有るとて、人數をわくれば、其備減りたるとて上下力をおとす者なり、其所に當る敵も大にきほふ者なり、惣じて大備への崩れ立ちたるは、何たる名大將とても、其下の剛の者共も支配成るまじきぞ、
新字:縦へば番匠か大和国ならの大仏殿を立るに、二尺·三尺のかねをもつて立て、二間四方のらいさき堂をも右のかねにて仕る、すこしき備を立て、大人数には組合せよからん、大備へに組み其陣にて用有るとて、人数をわくれば、其備減りたるとて上下力をおとす者なり、其所に当る敵も大にきほふ者なり、惣じて大備への崩れ立ちたるは、何たる名大将とても、其下の剛の者共も支配成るまじきぞ、
書き下し
縦へば番匠か大和国ならの大仏殿を立るに、二尺·三尺のかねをもつて立て、二間四方のらいさき堂をも右のかねにて仕る、すこしき備を立て、大人数には組合せよからん、大備へに組み其陣にて用有るとて、人数をわくれば、其備減りたるとて上下力をおとす者なり、其所に当る敵も大にきほふ者なり、惣じて大備への崩れ立ちたるは、何たる名大将とても、其下の剛の者共も支配成るまじきぞ、
現代語訳
たとえば番匠が大和国奈良の大仏殿を建てるにも、二尺・三尺の曲尺で建て、二間四方の礼拝堂も同じ曲尺で造る。小さな備えを立てて、大人数にはそれを組み合わせるのがよい。大備えに組んで、その陣で用があるといって人数を分ければ、その備えが減ったといって上下とも力を落とすものである。その所に当たる敵も大いに勢いづくものである。総じて大備えが崩れ立ったならば、どれほどの名大将でも、その下の剛の者どもでも、支配はできないであろう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『甲陽軍鑑』品第十一又人数は大軍をあつかいつけたる大将少人数は扱よからん、そなへの義は少人数を能く立し覚へたらば、大軍は立よからん、子細は三万の人数を持たる大将の家老五人に、五千づゝ預け、本大将共に六人にて三万の人数を支配する大将も有るべし、其段をさほうしらざる者は、能きことゝ存る事もあらん、是は何に付てもあやうき事多し、三万の大将の下には、人数二百·三百·五百·千或は三千持たるも有るべし、扨大軍斗リの備へ立様をもつてかけ、少人数を指遣ふ時の様子も有べし、其節に其大将に成て行人は、必ず手くばりまはりかぬるものなり、縦ばきる物ひとつを寒き夜に、三人してきてねる様にて、何共迷惑成る義多からん、さるに付少勢を能く備へ立覚へ、其上大人数はしよき物ならん、それによつて信玄公の備は卅五人より立始め給ふ、
-
言志四録・言志耋録 第百四十六条 舟に楫艣無ければ舟に楫艣無ければ、則ち川海済るべからず。門に鎖鑰有れば、則ち盗賊闚ふこと能はず。
-
言志四録・言志晩録 別存 第二十六条 酒樽を破りて舟人に飲ましむ辛未の歳、韓人来聘す。旨有りて之を対州に館し、大小の官員を遣はして聘を受けしむ。公も亦焉に与る。公海を渡る時、酒数樽を貯へしむ。人其の故を知らず。既にして事訖り、纜を解きて帰に就く。時に風浪驟かに興り、風逆ひ、舟人極めて苦しむ。公乃ち自ら酒樽を倒し、鎗鐓を以て其の底を撞き破り、手自ら飯椀を以て之を斟み、舟人に飲ましむ。舟人是に於て気力一倍し、我が船独り先づ唐津に達す。他船は則ち後るること数十里なりと云ふ。
-
李衛公問対・卷下攻むる者は、其の城を攻め其の陳を擊つに止まらず、必ず其の心を攻むるの術有り。守る者は、其の壁を完くし其の陳を堅くするに止まらず、必ずや吾が氣を守りて待つ有り。
-
『学問のすゝめ』四編・学者の職分を論ず・これを散ずれば明なりこれを集むれば暗なり私にありては智なり、官にありては愚なり。これを散ずれば明なり、これを集むれば暗なり。政府は衆智者の集まるところにして、一愚人の事を行なうものと言うべし。あに怪しまざるを得んや。畢竟その然る所以は、かの気風なるものに制せられて、人々みずから一個の働きを逞しゅうすること能わざるによりて致すところならんか。維新以来、政府にて学術、法律、商売等の道を興さんとして効験なきも、その病の原因はけだしここにあるなり。しかるにいま一時の術を用いて下民を御し、その知徳の進むを待つとは、威をもって人を文明に強ゆるものか、しからざれば欺きて善に帰せしむるの策なるべし。政府威を用うれば人民は偽をもってこれに応ぜん、政府欺を用うれば人民は容を作りてこれに従わんのみ。これを上策と言うべからず。たといその策は巧みなるも、文明の事実に施して益なかるべし。ゆえにいわく、世の文明を進むるには、ただ政府の力のみに依頼すべからざるなり。
-
司馬法・定爵将は身なり、卒は支(し)なり、伍は指拇(しぼ)なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る