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山鹿語類 / 士道・明衣服之制

次に佩のこと、古之君子必佩玉と云へり。陳氏禮書曰、古之君子必佩玉、其制上有折衡、上横曰衡下有双璜、中有琚瑀、下有衝牙、貫之以組綬、納之以蠙珠、而其色有白蒼赤之弁、其聲有角徵宮羽之應、其象有仁智禮樂忠信道德之備、此所以非僻之心無自入也といへり。君子佩玉は、其佩玉を見て己れが德を致し、温潤を玉に可比と云へるの心なるべし。ことに往來ともに佩玉の聲合ときは其威儀あたり、玉たがふときは威儀こゝにそむくを考へて、身躰の威儀不得已して正しからんことを欲するが故に、必佩玉也。

新字:次に佩のこと、古之君子必佩玉と云へり。陳氏礼書曰、古之君子必佩玉、其制上有折衡、上横曰衡下有双璜、中有琚瑀、下有衝牙、貫之以組綬、納之以蠙珠、而其色有白蒼赤之弁、其声有角徴宮羽之応、其象有仁智礼楽忠信道徳之備、此所以非僻之心無自入也といへり。君子佩玉は、其佩玉を見て己れが徳を致し、温潤を玉に可比と云へるの心なるべし。ことに往来ともに佩玉の声合ときは其威儀あたり、玉たがふときは威儀こゝにそむくを考へて、身体の威儀不得已して正しからんことを欲するが故に、必佩玉也。

書き下し

次に佩のこと、古之君子必佩玉と云へり。陳氏礼書曰、古之君子必佩玉、其制上有折衡、上横曰衡下有双璜、中有琚瑀、下有衝牙、貫之以組綬、納之以蠙珠、而其色有白蒼赤之弁、其声有角徴宮羽之応、其象有仁智礼楽忠信道徳之備、此所以非僻之心無自入也といへり。君子佩玉は、其佩玉を見て己れが徳を致し、温潤を玉に可比と云へるの心なるべし。ことに往来ともに佩玉の声合ときは其威儀あたり、玉たがふときは威儀こゝにそむくを考へて、身体の威儀不得已して正しからんことを欲するが故に、必佩玉也。

現代語訳

次に佩(腰に下げる飾り)のことである。「古の君子は必ず玉を佩びた」という。陳氏の『礼書』に言う。「古の君子は必ず玉を佩びた。その作りは、上に折れた衡(横木。上の横木を衡という)があり、下に二つの璜(半円の玉)があり、中に琚と瑀(佩玉の玉)があり、下に衝牙(牙形の玉)があって、組紐でこれを貫き、蠙珠(真珠)を通す。その色には白・蒼・赤の区別があり、その音には角・徴・宮・羽の音階の響き合いがあり、そのかたどるものには仁・智・礼・楽・忠・信・道・徳が備わっている。これによってよこしまな心が入る余地がないのである」と言っている。君子が玉を佩びるのは、その佩玉を見て自分の徳を磨き、温かく潤った人柄を玉に比べようという心であろう。とりわけ行き来するときに佩玉の音が調子に合っていればその威儀は正しく、玉の音が乱れれば威儀がそむいていると考えて、身体の威儀がやむをえず正しくなるように望むので、必ず玉を佩びるのである。

解説

君子が玉を佩びる理由を、陳祥道の『礼書』を引いて説く段である。佩玉は色・音・かたちに仁智礼楽などの徳を象り、身につける者によこしまな心を入れさせない。素行はさらに、歩くときの玉の音の調子が威儀の正否を知らせるという実際的な働きを強調する。徳を玉に比べるのは『礼記』聘義などに見える古い考えである。振る舞いを外から知らせてくれる仕掛けを身につけるという発想は、自分の状態を客観的に確かめる工夫として今も生かせる。

この章句が説くこと

佩玉徳威儀礼君子自省

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