正法眼蔵随聞記 / 巻三
古人の云く、不ル似其ノ人二莫ル語ジ其ノ風ヲと、云心ろは、其の人の德を學はす知らすして、其の人の失あるを見て、其の人はよけれども、其の事は惡しさよ、惡き事をよき人もするかなと思ふべからすとなり、只其の人の德を取て、失を取ることなかれ、君子は德を取て失を取らすと云ふは、此の心なり、
新字:古人の云く、不ル似其ノ人二莫ル語ジ其ノ風ヲと、云心ろは、其の人の徳を学はす知らすして、其の人の失あるを見て、其の人はよけれども、其の事は悪しさよ、悪き事をよき人もするかなと思ふべからすとなり、只其の人の徳を取て、失を取ることなかれ、君子は徳を取て失を取らすと云ふは、此の心なり、
書き下し
古人の云く、不ル似其ノ人二莫ル語ジ其ノ風ヲと、云心ろは、其の人の徳を学はす知らすして、其の人の失あるを見て、其の人はよけれども、其の事は悪しさよ、悪き事をよき人もするかなと思ふべからすとなり、只其の人の徳を取て、失を取ることなかれ、君子は徳を取て失を取らすと云ふは、此の心なり、
現代語訳
古人は言った、その人に似ないならば、その風を語るなと。言う心は、その人の徳を学ばず知らずして、その人に落ち度があるのを見て、その人はよいけれどもその事は悪いことよ、悪い事をよい人もするものだなと思ってはならない、ということである。ただその人の徳を取って、落ち度を取ってはならない。君子は徳を取って落ち度を取らないと言うのは、この心である。
解説
人を評するときの態度を説く条である。徳のほうを学ばないまま、落ち度だけを見つけて口にすることが戒められる。よい人でも悪い事をするものだ、という言い方は一見公平に見えるが、学ぶべきところを飛ばして落ち度に目を止めている点で退けられる。取捨の向きを定める、短く要点の締まった一条である。何を持ち帰るかは、見る側が選んでいる。
この章句が説くこと
徳落ち度批評君子取捨学び
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