文武訓 / 文訓下之末
一君子と名づけたるは何ぞや。君の位に居て、下民を子の如くいつくしむ、ゆゑに名づく。是孝經正義の說なり。又聖人或は賢人をも善人をも君子といふ。其位なしといへどもその德あればなり。小人とは何ぞ。耳目口鼻の欲にしたがひて、心志の大體を失へる者をいへり。是孟子の言に出でたり。位につきていへば、下にある細民を小人といふ。
新字:一君子と名づけたるは何ぞや。君の位に居て、下民を子の如くいつくしむ、ゆゑに名づく。是孝経正義の説なり。又聖人或は賢人をも善人をも君子といふ。其位なしといへどもその徳あればなり。小人とは何ぞ。耳目口鼻の欲にしたがひて、心志の大体を失へる者をいへり。是孟子の言に出でたり。位につきていへば、下にある細民を小人といふ。
書き下し
一君子と名づけたるは何ぞや。君の位に居て、下民を子の如くいつくしむ、ゆゑに名づく。是孝経正義の説なり。又聖人或は賢人をも善人をも君子といふ。其位なしといへどもその徳あればなり。小人とは何ぞ。耳目口鼻の欲にしたがひて、心志の大体を失へる者をいへり。是孟子の言に出でたり。位につきていへば、下にある細民を小人といふ。
現代語訳
君子と名づけるのはなぜでしょうか。君の位にいて、下々の民を子のように慈しむので、そう名づけるのです。これは『孝経正義』の説です。また聖人、あるいは賢人や善人をも君子といいます。その位がなくてもその徳があるからです。小人とは何でしょうか。耳・目・口・鼻の欲に従って、心の大いなる本体を失った者をいいます。これは『孟子』の言葉に出ています。位についていえば、下にいる庶民を小人といいます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『大和俗訓』巻之二・為学下一楊子曰学者所以求為君子也。言ふ意は、学問をするは何の為ぞや。君子とならんが為なり。君子とは有徳人を云ふ。君子の字義は、易の正義に、人の君となりて万民を子のごとくする徳ある人をいへり。賤くして下にありても、其徳あれば君子と称す君子となるとは人となるなり。学ばざる人は云ふにたらず。学んでも君子とならずんば、学ばざるに同じくして、人と生れたるかひなし。君子となる事容易からず。しかれども、志を立ておこたらずんば、必其功あるべし。古語にも、志あるものは其事つひに成るといへり。学は終身のことなり。一息もいまだ残れる内は、此志怠るべからず。是人の一生の間のつとめなり。
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人物志・釋爭君子誠に能く争途の名険を睹て、独り玄路に高く乗れば、則ち光暉煥として日に新たに、徳声古人に倫しからん。
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『慎思録』巻之五心の力、之を才と謂ふ。心の善、之を徳と謂ふ。才徳兼ね全き、之を聖人と謂ふ。才徳衆に超ゆる、之を賢人と謂ふ。徳、才に勝る、之を君子と謂ふ。才、徳に勝る、之を英雄と謂ふ。徳有りて才無き、之を善人と謂ふ。才有りて徳無き、之を小人と謂ふ。才徳兼ね亡き、之を愚人と謂ふ。夫れ聖賢は得て見るべからず。君子を見ることを得ば、斯れ可なり。君子も亦得て見るべからず。善人を見ることを得ば、斯れ可なり。国家を治むる者、苟も君子と善人とを得ること能はずんば、則ち其の小人有らんよりは、寧ろ愚人有れ。古来国家を敗亡する者は、必ず小人よりす。愚人の如きは、其の力覆敗すること能はず。猶ほ小人の姦悪にして力有る者に愈れり。細かに之を論ずれば、古人は才徳衆に超ゆる者を以て亦之を君子と謂ふ。是れ徳の才に勝る者に止まらざるなり。才有りて徳無き者も、亦之を愚人と謂ふ。是れ才徳兼ね亡き者に止まらざるなり。這の二者は、通称するも亦可なり。蓋し賢人と君子とは、各指す所有りて名を異にすと雖も、然れども通称すれば則ち亦一と為すべし。愚者と小人との如きも亦然り。
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『正法眼蔵随聞記』巻三古人の云く、不ル似其ノ人二莫ル語ジ其ノ風ヲと、云心ろは、其の人の徳を学はす知らすして、其の人の失あるを見て、其の人はよけれども、其の事は悪しさよ、悪き事をよき人もするかなと思ふべからすとなり、只其の人の徳を取て、失を取ることなかれ、君子は徳を取て失を取らすと云ふは、此の心なり、
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