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山鹿語類 / 士道・明衣服之制

こゝに其制其人の位によつて差別をなす。是上下の差別を定め、君臣父子の品を明にして、自然に其分をしらしむるの制也。貴賤尊卑若亂るゝ時は、則過奢に下だり、吝嗇に落て、ともに君子大丈夫の法にあらず。然れば位を考へ其祿の多少を計て、相應する處の制を究め、其間に儉約をなすべき也。可着用位祿にして不着服ものは、或は公儀に對してその費へを省き、或は私について不得已のゆゑんあらんともがらは、其重に可從也。不然して衣服分をこえて見苦しからんには、必ず吝惜に陷りて、其弊ありぬべし。尤可謹也。故に古來天子より庶人に至るまで、悉く其制法を定め、服章の品を周禮に詳にす。聖人其思を深くすればなり。

新字:こゝに其制其人の位によつて差別をなす。是上下の差別を定め、君臣父子の品を明にして、自然に其分をしらしむるの制也。貴賤尊卑若乱るゝ時は、則過奢に下だり、吝嗇に落て、ともに君子大丈夫の法にあらず。然れば位を考へ其禄の多少を計て、相応する処の制を究め、其間に倹約をなすべき也。可着用位禄にして不着服ものは、或は公儀に対してその費へを省き、或は私について不得已のゆゑんあらんともがらは、其重に可従也。不然して衣服分をこえて見苦しからんには、必ず吝惜に陥りて、其弊ありぬべし。尤可謹也。故に古来天子より庶人に至るまで、悉く其制法を定め、服章の品を周礼に詳にす。聖人其思を深くすればなり。

書き下し

こゝに其制其人の位によつて差別をなす。是上下の差別を定め、君臣父子の品を明にして、自然に其分をしらしむるの制也。貴賤尊卑若乱るゝ時は、則過奢に下だり、吝嗇に落て、ともに君子大丈夫の法にあらず。然れば位を考へ其禄の多少を計て、相応する処の制を究め、其間に倹約をなすべき也。可着用位禄にして不着服ものは、或は公儀に対してその費へを省き、或は私について不得已のゆゑんあらんともがらは、其重に可従也。不然して衣服分をこえて見苦しからんには、必ず吝惜に陥りて、其弊ありぬべし。尤可謹也。故に古来天子より庶人に至るまで、悉く其制法を定め、服章の品を周礼に詳にす。聖人其思を深くすればなり。

現代語訳

そこで衣服の制度は、その人の位によって区別を設ける。これは上下の区別を定め、君臣父子の等級を明らかにして、おのずからその分(身のほど)を知らせる制度である。貴賤尊卑がもし乱れるときは、度を越えた奢りに落ちたり、けちに落ちたりして、どちらも君子・大丈夫のあり方ではない。だから位を考え、禄の多少をはかって、それにふさわしい制度を見きわめ、その範囲の中で倹約をすべきである。位や禄からすれば着てよいのに着ない者で、あるいは公儀に対してその出費を省き、あるいは私的にやむをえない理由がある者は、その重いほうに従えばよい。そうでなくて衣服が分に合わず見苦しいようなら、きっと吝嗇に陥って、その弊害が生じるであろう。もっとも慎むべきである。ゆえに古来、天子から庶人に至るまで、ことごとくその制度を定め、服や文様の等級を『周礼』に詳しく記した。聖人の考えが深かったからである。

解説

衣服を位と禄に応じて分ける理由を説く。素行は身分秩序を、上下の区別を目に見える形にして各人に分を自覚させる仕組みと見る。注目すべきは、奢りだけでなく吝嗇も君子の道に外れるとする点で、分に応じた制度の内側で倹約せよと言う。武家の家計が苦しくなりつつあった江戸前期に、見栄と吝嗇の両方を戒めた言葉である。現代でも、立場にふさわしい支出と節約の線をどこに引くかは、管理職や経営者が常に問われる判断である。

この章句が説くこと

職分倹約分限身分衣服吝嗇

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