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山鹿語類 / 士道・明衣服之制

致堂胡氏曰、服章之設、所以辨上下定民志也、莫卑乎民、莫尊乎天子、而服同一色、上下無所辨、民志何由定、僣亂由此而生矣、古之聖王自奉儉約、惡衣非食、而事天地宗廟、臨朝廷百官、則等級分明、故其十有二章、黻珽幅舄衡紞紘綖、以昭其度、藻率鞸鞛鞶厲游纓、以照其數、威嚴尊重、禮無與二、然後人主之勢隆、非廣己以造大、理當然也、故晏平仲爲大國之卿、一狐裘三十年、澣衣濯冠以朝、君子譏其隘曰、難乎其爲下也、隋文儉約、施之宮闈之中燕私之用、可也、與庶人同服、而坐乎廟朝、儉不中禮、不足以爲法矣。是上下の差別をかへては、形こゝに禮を犯すを以て、自然に上を犯すの志生ずべきを以て也。

新字:致堂胡氏曰、服章之設、所以弁上下定民志也、莫卑乎民、莫尊乎天子、而服同一色、上下無所弁、民志何由定、僣乱由此而生矣、古之聖王自奉倹約、悪衣非食、而事天地宗廟、臨朝廷百官、則等級分明、故其十有二章、黻珽幅舄衡紞紘綖、以昭其度、藻率鞸鞛鞶厲游纓、以照其数、威厳尊重、礼無与二、然後人主之勢隆、非広己以造大、理当然也、故晏平仲為大国之卿、一狐裘三十年、澣衣濯冠以朝、君子譏其隘曰、難乎其為下也、隋文倹約、施之宮闈之中燕私之用、可也、与庶人同服、而坐乎廟朝、倹不中礼、不足以為法矣。是上下の差別をかへては、形こゝに礼を犯すを以て、自然に上を犯すの志生ずべきを以て也。

書き下し

致堂胡氏曰、服章之設、所以弁上下定民志也、莫卑乎民、莫尊乎天子、而服同一色、上下無所弁、民志何由定、僣乱由此而生矣、古之聖王自奉倹約、悪衣非食、而事天地宗廟、臨朝廷百官、則等級分明、故其十有二章、黻珽幅舄衡紞紘綖、以昭其度、藻率鞸鞛鞶厲游纓、以照其数、威厳尊重、礼無与二、然後人主之勢隆、非広己以造大、理当然也、故晏平仲為大国之卿、一狐裘三十年、澣衣濯冠以朝、君子譏其隘曰、難乎其為下也、隋文倹約、施之宮闈之中燕私之用、可也、与庶人同服、而坐乎廟朝、倹不中礼、不足以為法矣。是上下の差別をかへては、形こゝに礼を犯すを以て、自然に上を犯すの志生ずべきを以て也。

現代語訳

致堂胡氏(胡寅)は言う。「服や文様を設けるのは、上下を区別し民の志を定めるためである。民より卑しい者はなく、天子より尊い者はないのに、服が同じ一色であれば、上下を区別するところがなく、民の志はどうして定まろうか。分を越えた乱れはここから生じる。古の聖王は自らは倹約を奉じ、粗末な衣を着て食を薄くしたが、天地や宗廟に仕え、朝廷で百官に臨むときは、等級がはっきりしていた。ゆえに十二章の文様や、黻(ひざかけ)・珽(玉の笏)・幅(すねあて)・舃(くつ)・衡・紞・紘・綖(冠の飾りや紐)でその度合いを示し、藻・率・鞸・鞛・鞶・厲・游・纓(玉の敷物や刀の飾り、帯や旗や冠の紐)でその数を示し、威厳尊重であって、礼に並ぶものがなかった。そうしてのちに君主の勢いが盛んになる。自分を大きく見せて偉ぶるのではなく、理として当然なのである。だから晏平仲(晏嬰)は大国の卿でありながら一枚の狐の皮衣を三十年着て、衣を洗い冠をすすいで朝廷に出たが、君子はその狭さをそしって『それでは下の者が困る』と言った。隋の文帝の倹約も、宮中の私生活に施すのはよいが、庶人と同じ服で宗廟や朝廷に座るのは、倹約が礼にかなっておらず、手本とするに足りない」と。これは、上下の区別を変えてしまうと、形のうえで礼を犯すことになるので、おのずから上を犯す志が生じるからである。

解説

胡寅の文を引いて、服の区別が民の志を定め、混乱を防ぐことを述べる。晏嬰が狐裘一枚を三十年着た逸話は『礼記』檀弓に見える倹約の美談だが、ここでは上に立つ者の過度の倹約が下の者を窮屈にするという批判の例として使われる。素行は形の上で礼を崩すことが、やがて上を犯す心につながると見る。上司が極端に質素だと部下が経費を使いにくくなる、という現代の職場の話にも通じる指摘である。

この章句が説くこと

礼倹約上下威儀晏嬰胡寅

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