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山鹿語類 / 士道・節飮食之用

君父の前に侍て、食に預る事あらば、萬づ君父の禮をうけて、己先だつて不可飮食。但先嘗めてこゝろむべき食物等は、皆自先んじて飮食すべし。度々に君父の方を伺て、左右に色躰し、禮容を恭敬すべし。顏色を正し、口容をなをくし、口中の音あらしめず。一品々々恭しく受て、或は拜し或は揖し、盤を不汚、椀を大にけがさず。骨あるもの核あるものは、皆是を懷にす。酒は己れ先なむ。すべて其禮多と云へども、毋不敬の三字を以て是を守るべし。

新字:君父の前に侍て、食に預る事あらば、万づ君父の礼をうけて、己先だつて不可飲食。但先嘗めてこゝろむべき食物等は、皆自先んじて飲食すべし。度々に君父の方を伺て、左右に色体し、礼容を恭敬すべし。顔色を正し、口容をなをくし、口中の音あらしめず。一品々々恭しく受て、或は拝し或は揖し、盤を不汚、椀を大にけがさず。骨あるもの核あるものは、皆是を懐にす。酒は己れ先なむ。すべて其礼多と云へども、毋不敬の三字を以て是を守るべし。

書き下し

君父の前に侍て、食に預る事あらば、万づ君父の礼をうけて、己先だつて不可飲食。但先嘗めてこゝろむべき食物等は、皆自先んじて飲食すべし。度々に君父の方を伺て、左右に色体し、礼容を恭敬すべし。顔色を正し、口容をなをくし、口中の音あらしめず。一品々々恭しく受て、或は拝し或は揖し、盤を不汚、椀を大にけがさず。骨あるもの核あるものは、皆是を懐にす。酒は己れ先なむ。すべて其礼多と云へども、毋不敬の三字を以て是を守るべし。

現代語訳

君父の前に控えて食事にあずかることがあれば、万事君父の礼を受けてから、自分が先に飲食してはならない。ただし、先に毒見をして試すべき食物などは、みな自分が先に飲食すべきである。たびたび君父の方をうかがって、左右に目配りし、礼の容を恭しく敬むべきである。顔色を正し、口元をまっすぐにし、口の中で音を立てない。一品ずつ恭しく受けて、あるいは拝し、あるいは会釈し、皿を汚さず、椀をひどく汚さない。骨のある物や種のある物は、みな懐に収める。酒は自分が先に嘗める。すべてその礼は多いけれども、「毋不敬(敬わざることなかれ)」の三字によってこれを守るべきである。

解説

本条は君父の前で食事をいただくときの作法を述べる。君父の礼を受けてから食べ、先に試すべき物はかえって自分が先に嘗める。たびたび君父をうかがい、口中で音を立てず、一品ずつ拝して受け、骨や種は懐に収め、酒は先に嘗める。細かな定めは多いが、素行はそれを『礼記』曲礼冒頭の「毋不敬」の三字に収める。作法の目録を暗記するより、敬の一心を保てば個々の場面で外れない、というのが素行の礼の教え方である。現代でも、上司や取引先との会食で細かな作法に迷ったときは、相手を敬う心に立ち返れば、とるべき振る舞いはおのずと見えてくる。

この章句が説くこと

侍食敬君父作法忠孝曲礼

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