導師導古典を学びたいすべての人に

山鹿語類 / 士道・節飮食之用

又年老の節あり。人の年に少壯老あつて、幼弱の間は美食を以て養なはざるときは氣血全くとゝのほらず。老年の後は魚肉を以て老衰の氣血をたすけしむ。七十非肉不飽と云へる、是也。年に三段のたがい有之が如く、人々の氣質に其差別あり。尤可愼其養。又天の時あり。寒温燥濕を考へて、寒天には温物を食とし、溫天には冷物を主とす。燥温皆是に准す。此節たがふときは、必ず內に病を生ず。而して飮食亦不宜。又土地に付て其飮食の味たがひ、其物の厚薄善惡あり。是を考へて飮食を制すべし。况や祭祀饗應飮酒の禮節、古人旣に其制を定む。是を計て時宜に從にある也。祭祀饗應飮酒各上中下の差あり。上より下への禮あり。下より上への禮あり。五倫の交接、專これを用ゆ。吉凶軍賓嘉に付て其制相こと也、詳に可究理也。

新字:又年老の節あり。人の年に少壮老あつて、幼弱の間は美食を以て養なはざるときは気血全くとゝのほらず。老年の後は魚肉を以て老衰の気血をたすけしむ。七十非肉不飽と云へる、是也。年に三段のたがい有之が如く、人々の気質に其差別あり。尤可慎其養。又天の時あり。寒温燥湿を考へて、寒天には温物を食とし、温天には冷物を主とす。燥温皆是に准す。此節たがふときは、必ず内に病を生ず。而して飲食亦不宜。又土地に付て其飲食の味たがひ、其物の厚薄善悪あり。是を考へて飲食を制すべし。況や祭祀饗応飲酒の礼節、古人既に其制を定む。是を計て時宜に従にある也。祭祀饗応飲酒各上中下の差あり。上より下への礼あり。下より上への礼あり。五倫の交接、専これを用ゆ。吉凶軍賓嘉に付て其制相こと也、詳に可究理也。

書き下し

又年老の節あり。人の年に少壮老あつて、幼弱の間は美食を以て養なはざるときは気血全くとゝのほらず。老年の後は魚肉を以て老衰の気血をたすけしむ。七十非肉不飽と云へる、是也。年に三段のたがい有之が如く、人々の気質に其差別あり。尤可慎其養。又天の時あり。寒温燥湿を考へて、寒天には温物を食とし、温天には冷物を主とす。燥温皆是に准す。此節たがふときは、必ず内に病を生ず。而して飲食亦不宜。又土地に付て其飲食の味たがひ、其物の厚薄善悪あり。是を考へて飲食を制すべし。況や祭祀饗応飲酒の礼節、古人既に其制を定む。是を計て時宜に従にある也。祭祀饗応飲酒各上中下の差あり。上より下への礼あり。下より上への礼あり。五倫の交接、専これを用ゆ。吉凶軍賓嘉に付て其制相こと也、詳に可究理也。

現代語訳

また年齢による節度がある。人の年には少・壮・老があって、幼く弱い間は良い食物で養わなければ、気血が十分に整わない。老年になってからは、魚や肉で老い衰えた気血を助けさせる。「七十歳になれば肉でなければ満腹しない」と言うのがこれである。年に三段階の違いがあるように、人それぞれの気質にも違いがある。その養いは最も慎むべきである。また天の時がある。寒・温・燥・湿を考えて、寒いときには温かい物を食べ、暖かいときには冷たい物を主とする。燥や湿もみなこれに準じる。この節度にたがうと、必ず内に病を生じる。そして飲食もまたよろしくない。また土地によって飲食の味が違い、その物に厚い薄い、良い悪いがある。これを考えて飲食を定めるべきである。まして祭祀・饗応・飲酒の礼節は、古人がすでにその定めを決めている。これをはかって時宜に従うのである。祭祀・饗応・飲酒にはそれぞれ上・中・下の差がある。上から下への礼があり、下から上への礼がある。五倫の交わりでは、もっぱらこれを用いる。吉・凶・軍・賓・嘉の礼によってその定めは異なる。詳しく理を究めるべきである。

解説

本条は、飲食を年齢・気質・季節・土地に応じて調えよと説く。幼少期は良い物で気血を整え、老年には魚肉で衰えを補う。『礼記』王制の「七十にして肉にあらざれば飽かず」がその根拠である。寒い時は温かい物、暑い時は冷たい物を主とし、土地ごとの産物の厚薄も考える。さらに祭祀・饗応・飲酒の礼にも上下の差があり、五礼ごとに定めが違うから、時宜に従って理を究めよという。素行の飲食論は、養生と礼の両面から、一人ひとりと場面に応じた節度を求めている。現代でも、年齢や体質、季節に合わせて食を変えることは、健康管理の基本である。

この章句が説くこと

飲食養生時宜節度五倫礼

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る