山鹿語類 / 士道・愼容貌之動
次に手足の容あり。禮曰、足容重、手容恭といへり。云心は足を擧ぐること高きときは、必地席を蹈に其音あり。况や高く擧げては、物をふみけつまづくの失あり。各足を用ゆることの輕く忽なるに因れり。爰を以て足の容は遲く靜ならんことを欲する也。故に君父尊貴の前にして、近くは膝行して足を不用、遠き時は行步皆安靜にして、足席を不離を禮とす。尊貴に足をみせしめず。危座して足を後にす。是朝廷幷に高貴に相接するの禮なり。
新字:次に手足の容あり。礼曰、足容重、手容恭といへり。云心は足を挙ぐること高きときは、必地席を蹈に其音あり。況や高く挙げては、物をふみけつまづくの失あり。各足を用ゆることの軽く忽なるに因れり。爰を以て足の容は遅く静ならんことを欲する也。故に君父尊貴の前にして、近くは膝行して足を不用、遠き時は行歩皆安静にして、足席を不離を礼とす。尊貴に足をみせしめず。危座して足を後にす。是朝廷幷に高貴に相接するの礼なり。
書き下し
次に手足の容あり。礼曰、足容重、手容恭といへり。云心は足を挙ぐること高きときは、必地席を蹈に其音あり。況や高く挙げては、物をふみけつまづくの失あり。各足を用ゆることの軽く忽なるに因れり。爰を以て足の容は遅く静ならんことを欲する也。故に君父尊貴の前にして、近くは膝行して足を不用、遠き時は行歩皆安静にして、足席を不離を礼とす。尊貴に足をみせしめず。危座して足を後にす。是朝廷幷に高貴に相接するの礼なり。
現代語訳
次に手足の容がある。『礼記』に「足の容は重く、手の容は恭しく」とある。その意味は、足を高く上げると、地面や畳を踏むときに必ず音がする。まして高く上げれば、物を踏んだりつまずいたりする失敗がある。これはみな足の使い方が軽はずみでぞんざいだからである。そこで足の容はゆっくり静かであることを望むのである。だから君父や尊貴の人の前では、近ければ膝で進んで足を使わず、遠いときは歩みをすべて静かにして、足を畳から離さないのを礼とする。尊貴の人に足を見せない。正座して足を後ろにする。これが朝廷や高貴の人と接するときの礼である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之四・礼一曲礼曰く、敬せざること毋かれ。凡人事の視聴言動より出づる処、万事敬しまざる事なかるべし。敬とは、心に道に違はん事をおそれて、恣ならざるを云ふ。是心をたもち、身ををさめ、事を行ふ則なり。是礼の本なり。古より、聖人賢人の心法は、敬を以て要とし給ふ。凡身の行儀作法なく、道を失ひ、禍おこるも、皆敬まざるによれり。古語にも敬めば、禍にかつといへり。つつしめば禍なし。白楽天が言に、福と禍とは慎むと慎まざるとに在りといへり。
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『五常訓』巻之四・礼一君子は天地をおそれうやまふ。故に大風、大雨、迅雷などの時は、容をあらためて、夜はおきて衣服を著て坐す。是天のいかりを敬ふ礼なり。是亦天につかうまつるの道の一端なり。一少儀曰、虚を執れども盈をとるが如く、虚に入れども人あるが如くにす。いふ意は、内に物なき器をとるにも、盈ちてこぼれやすき器をとるが如く、おそれつつしむべし。人の居らざる家に入るにも、人あるが如くつつしむべし。是は敬の心常にあるを云ふ。礼の本なり。
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『五常訓』巻之四・礼一礼は心につつしみありて、人をうやまふを本とし、万事を行ふに、則にしたがひて、正しく理あるを文とす。則とは作法なり。孝経に、礼は敬のみ。云ふ意は、礼は敬を専らとす。而已とは、此外には無しと云ふ詞なり。朱子曰く、礼の本は人を敬ふに在り。人をうやまふは、心のつつしみより起る。人を敬ふも、其人をあはれむ心より出づる故朱子も、礼は仁のあらはれたる也といへり。礼記曰、礼は理也。周子曰く、理を礼と曰ふ、理はすぢめなり。すぢめとは、万事を行ふに、各正しき則ありて、其則にちがはざるは、即理なり。理にしたがへば、万事正しくしてをさまる。理にしたがはざれば、万事邪にして、みだれて行はれず。朱子曰、礼は天理の節文、人事の儀則なり。
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『春秋左氏伝』成公十三年 礼は身の幹十三年春、晉侯郤錡をして來りて師を乞はしむ。事を將ふに敬せず。孟獻子曰く、「郤氏其れ亡びんか。禮は身の幹なり。敬は身の基なり。郤子基無し。且つ先君の嗣卿なり。命を受けて以って師を求む、將に社稷を是れ衛らんとするなり。而るに惰りて君命を棄つ。亡びずして何をか為さん」と。
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『春秋左氏伝』僖公十一年 礼は国の幹十一年春、晉侯使ひして丕鄭の亂を以て來り告げしむ。天王召の武公・內史過をして晉侯に命を賜はしむ。玉を受くること惰る。過歸りて王に告げて曰く、「晉侯其れ後無からんか。王之に命を賜ひて、瑞を受くるに惰る、先づ自ら棄つるのみ、其れ何の繼ぐこと之れ有らん。禮は、國の幹なり。敬は、禮の輿なり。敬せずんば則ち禮行はれず、禮行はれずんば則ち上下昏し、何を以てか世に長からん」と。夏、揚・拒・泉・皋・伊雒の戎同じく京師を伐ち、王城に入り、東門を焚く、王子帶之を召けばなり。秦・晉戎を伐ちて以て周を救ふ。秋、晉侯戎を王に平らぐ。黃人楚に貢を歸さず。冬、楚人黃を伐つ。
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『五常訓』巻之四・礼一礼記に、子曰、敬ひて礼にあたらざる、これを野と云ふ。敬ふは誠によけれど、礼にかなはざれば、これ野きなり。敬によき程の法あり。過不及ありて、其法にかなはざるは、是礼にあたらざるなり。況やおごりて理にかなはざるは、ことに礼にそむけり。野きより、其害甚し。
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