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五常訓 / 巻之四・礼

一曲禮曰、毋不敬。凡人事の視聽言動より出づる處、萬事敬しまざる事なかるべし。敬とは、心に道に違はん事をおそれて、恣ならざるを云ふ。是心をたもち、身ををさめ、事を行ふ則なり。是禮の本なり。古より、聖人賢人の心法は、敬を以て要とし給ふ。凡身の行儀作法なく、道を失ひ、禍おこるも、皆敬まざるによれり。古語にも敬めば、禍にかつといへり。つゝしめば禍なし。白樂天が言に、福與禍在乎愼與不愼といへり。

新字:一曲礼曰、毋不敬。凡人事の視聴言動より出づる処、万事敬しまざる事なかるべし。敬とは、心に道に違はん事をおそれて、恣ならざるを云ふ。是心をたもち、身ををさめ、事を行ふ則なり。是礼の本なり。古より、聖人賢人の心法は、敬を以て要とし給ふ。凡身の行儀作法なく、道を失ひ、禍おこるも、皆敬まざるによれり。古語にも敬めば、禍にかつといへり。つゝしめば禍なし。白楽天が言に、福与禍在乎慎与不慎といへり。

書き下し

一曲礼曰く、敬せざること毋かれ。凡人事の視聴言動より出づる処、万事敬しまざる事なかるべし。敬とは、心に道に違はん事をおそれて、恣ならざるを云ふ。是心をたもち、身ををさめ、事を行ふ則なり。是礼の本なり。古より、聖人賢人の心法は、敬を以て要とし給ふ。凡身の行儀作法なく、道を失ひ、禍おこるも、皆敬まざるによれり。古語にも敬めば、禍にかつといへり。つつしめば禍なし。白楽天が言に、福と禍とは慎むと慎まざるとに在りといへり。

現代語訳

『礼記』曲礼篇に「敬わないことがあってはならない」とあります。およそ人の事で、見る・聞く・言う・動くことから出るものは、あらゆる事を慎まないことがあってはなりません。敬とは、心に道にたがうことを恐れて、ほしいままにしないことをいいます。これは心を保ち、身を修め、事を行う決まりです。これが礼の本です。昔から聖人や賢人の心法は、敬を要とされました。およそ身に行儀作法がなく、道を失い、禍が起こるのも、みな慎まないことによります。古語にも「敬めば禍に勝つ」といいます。慎めば禍はありません。白楽天の言葉に「福と禍は、慎むか慎まないかにある」とあります。

解説

『礼記』曲礼上の冒頭「敬せざること毋かれ」を取り上げ、見る・聞く・言う・動くのすべてを慎むことが礼の本だと説いています。敬とは道にたがうことを恐れて気ままにしないことで、朱子学では心の修養の要とされました。唐の詩人白居易の「福と禍とは慎むと慎まざるとに在り」という言葉も引かれます。日々の言動を慎むことが禍を防ぐという考えは、うっかりした一言やSNSへの投稿が大きな問題になりうる現代にこそ重みを持つ教えです。

この章句が説くこと

敬礼慎み礼記禍福

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