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山鹿語類 / 士道・愼容貌之動

軍旅にをいてはひざまづかず不拜。是足を自由にして速に立て其の用をなさんがため也。手の容は恭しくして、手を高貴の人にあらはせじとす。古來禮服各手をかくすまで長からしめ、手を拱して外に不出。今其禮あらずと云ども、君父の前に進まんには手を不出。或は衣の下にをさめ、或は相拱してみだりに不動、君父の前に侍るとき猶然り。手を以て席に付き、拜するの貌をなし、手を不可動搖也。而して軍旅の變に臨むときは、衣服を短くして劔戟を握ることを利し、手を席につかず、衣服の下にかくさず。速に手の用所のたるを以て其貌とす。是手足の禮各其事物時處に因て相變るの禮たり。容經曰、跪以微磬之容、揄右而下、進左而起、手有抑揚、各尊其紀、跪容拜以磬折之容、吉事尙左、凶事上右、隨前以擧、項衡以下、寧速無遲、背項之狀、如屋之玄、拜容

新字:軍旅にをいてはひざまづかず不拝。是足を自由にして速に立て其の用をなさんがため也。手の容は恭しくして、手を高貴の人にあらはせじとす。古来礼服各手をかくすまで長からしめ、手を拱して外に不出。今其礼あらずと云ども、君父の前に進まんには手を不出。或は衣の下にをさめ、或は相拱してみだりに不動、君父の前に侍るとき猶然り。手を以て席に付き、拝するの貌をなし、手を不可動揺也。而して軍旅の変に臨むときは、衣服を短くして剣戟を握ることを利し、手を席につかず、衣服の下にかくさず。速に手の用所のたるを以て其貌とす。是手足の礼各其事物時処に因て相変るの礼たり。容経曰、跪以微磬之容、揄右而下、進左而起、手有抑揚、各尊其紀、跪容拝以磬折之容、吉事尚左、凶事上右、随前以挙、項衡以下、寧速無遅、背項之状、如屋之玄、拝容

書き下し

軍旅にをいてはひざまづかず不拝。是足を自由にして速に立て其の用をなさんがため也。手の容は恭しくして、手を高貴の人にあらはせじとす。古来礼服各手をかくすまで長からしめ、手を拱して外に不出。今其礼あらずと云ども、君父の前に進まんには手を不出。或は衣の下にをさめ、或は相拱してみだりに不動、君父の前に侍るとき猶然り。手を以て席に付き、拝するの貌をなし、手を不可動揺也。而して軍旅の変に臨むときは、衣服を短くして剣戟を握ることを利し、手を席につかず、衣服の下にかくさず。速に手の用所のたるを以て其貌とす。是手足の礼各其事物時処に因て相変るの礼たり。容経曰、跪以微磬之容、揄右而下、進左而起、手有抑揚、各尊其紀、跪容拝以磬折之容、吉事尚左、凶事上右、随前以挙、項衡以下、寧速無遅、背項之状、如屋之玄、拝容

現代語訳

軍旅においてはひざまずかず、拝礼もしない。これは足を自由にして、すぐに立って役に立つためである。手の容は恭しくして、手を高貴の人の前にあらわにしないようにする。古来、礼服はどれも手を隠すほど袖を長くし、手を組んで外に出さなかった。今はその礼はないといっても、君父の前に進むときは手を出さない。あるいは衣の下に収め、あるいは手を組んでむやみに動かさない。君父の前に控えているときもそうである。手を畳について拝む姿をとり、手を揺り動かしてはならない。そして軍旅の変事に臨むときは、衣服を短くして刀や戟を握りやすくし、手を畳につかず、衣服の下に隠さない。すぐに手が役に立つことをその姿とする。これが、手足の礼がそれぞれ事柄・時・場所によって変わるということである。『容経』に「跪くには少し身をかがめた容で、右を引いて下ろし、左を進めて起つ。手には上げ下げがあり、それぞれその筋目を尊ぶ(跪の容)。拝むには深く身を折った容で、吉事には左を尊び、凶事には右を上にし、前に従って挙げ、首を水平にして下げ、遅いよりは速いほうがよく、背と首の形は屋根の反りのようにする(拝の容)」とある。

解説

本条は手の容と、手足の礼が場面で変わることを説く。君父の前では手を袖や衣の下に収めて動かさず、畳について拝む。ところが戦場では、膝をつかず拝さず、袖を短くして武器をすぐ握れるようにする。同じ礼でも、平時は慎みを、戦時は即応を形にするのである。素行は賈誼『容経』の跪・拝の型も引き、古典の細かな規範を武家の実用に引き寄せて読む。形は目的に従って変わり、目的を忘れた形式は礼ではない、という考えがここにある。現代の職場の服装や作法も、その場で何をするためのものかを問えば、守るべき点と変えてよい点が見えてくる。

この章句が説くこと

手足手容軍旅礼時処位容経

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