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山鹿語類 / 士道・愼言語

次に言語之戒あり。是は君父臣子の間、兄弟夫婦朋友の內、常に相言語するに、戒しめ守るべきの事なり。それとは時をはかるべし。云心は言の宜き時節をはかり、物語可仕時をしること也。たとへば理のつまれることにても、其云出して可然處を不考して云ば、其こと不可如理也。四時朝暮其所の云出しの能時分、我年齡むかいの年比各考へしるは、是時をはかる也。食不語、寢不言と云へるは、時の戒也。卒爾として云は、時を失也。恒言不稱老は、子の父母の年老を憚るべきの戒也。

新字:次に言語之戒あり。是は君父臣子の間、兄弟夫婦朋友の内、常に相言語するに、戒しめ守るべきの事なり。それとは時をはかるべし。云心は言の宜き時節をはかり、物語可仕時をしること也。たとへば理のつまれることにても、其云出して可然処を不考して云ば、其こと不可如理也。四時朝暮其所の云出しの能時分、我年齢むかいの年比各考へしるは、是時をはかる也。食不語、寝不言と云へるは、時の戒也。卒爾として云は、時を失也。恒言不称老は、子の父母の年老を憚るべきの戒也。

書き下し

次に言語之戒あり。是は君父臣子の間、兄弟夫婦朋友の内、常に相言語するに、戒しめ守るべきの事なり。それとは時をはかるべし。云心は言の宜き時節をはかり、物語可仕時をしること也。たとへば理のつまれることにても、其云出して可然処を不考して云ば、其こと不可如理也。四時朝暮其所の云出しの能時分、我年齢むかいの年比各考へしるは、是時をはかる也。食不語、寝不言と云へるは、時の戒也。卒爾として云は、時を失也。恒言不称老は、子の父母の年老を憚るべきの戒也。

現代語訳

次に言語の戒めがある。これは主君・父と臣・子の間、兄弟・夫婦・朋友の内で、常に互いに話すときに、戒め守るべき事柄である。それはまず時を計るべきである。その心は、言葉のふさわしい時節を計り、話してよい時を知ることである。たとえば道理の詰まった事柄でも、それを言い出してよいところを考えずに言えば、その事は道理のとおりにはならない。四季や朝夕、その場所での言い出すのに良い時分、自分の年齢や相手の年頃をそれぞれ考えて知るのは、時を計ることである。「食べるときは語らず、寝るときは言わない」というのは、時の戒めである。軽率に言うのは、時を失うことである。「ふだんの言葉で老という語を使わない」というのは、子が父母の年老いたことをはばかるべき戒めである。

解説

言語の戒めの第一として、時を計ることを説く章句である。どれほど理の通った話でも、言い出す時を誤れば理のとおりには運ばないという指摘は鋭い。論語郷党篇の「食らうに語らず、寝ぬるに言わず」、礼記曲礼の「恒言に老と称せず」を時の戒めとして引く。後者は親の老いを口にすることを憚る孝の心遣いである。素行は言葉の正しさを内容だけでなく時機の問題としてとらえた。現代でも、提案や指摘は内容が正しくても、相手の状況やタイミングを誤れば受け入れられない。

この章句が説くこと

言語時宜戒め孝論語慎言

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