格言聯璧 / 悖凶類・人の善を談ずるは膏沐よりも澤ふ
言語之惡,莫大於造誣。 行事之惡,莫大於苛刻。 心術之惡,莫大於深險。 談人之善,澤於膏沐。 暴人之惡,痛於戈矛。 當厄之施,甘為時雨。
新字:言語之悪,莫大於造誣。 行事之悪,莫大於苛刻。 心術之悪,莫大於深険。 談人之善,沢於膏沐。 暴人之悪,痛於戈矛。 当厄之施,甘為時雨。
書き下し
言語の惡は、誣を造るより大なるは莫し。 行事の惡は、苛刻より大なるは莫し。 心術の惡は、深險より大なるは莫し。 人の善を談ずるは、膏沐よりも澤ふ。 人の惡を暴くは、戈矛よりも痛し。 厄に當たるの施しは、甘きこと時雨為り。
現代語訳
言葉の悪としては、ありもしない罪を作り上げることより大きなものはありません。 行いの悪としては、むごく厳しいことより大きなものはありません。 心の持ち方の悪としては、腹黒く陰険なことより大きなものはありません。 人の善いところを語ることは、髪油よりも人をうるおします。 人の悪いところを暴くことは、ほこや槍よりも人を痛めつけます。 困っているときに受ける施しは、恵みの雨のように甘く身にしみます。
解説
前半の三句は、前の単位の罪、惡、過の句に続いて、言語、行事、心術のそれぞれで最大の悪を挙げます。造誣は無実の罪を作ること、深險は底が知れず陰険なことです。口、行い、心という三つの面を順に取り上げる構成で、仏教の身口意の三業にも似ています。後半の三句は次の単位の傷心の語の句と組になり、言葉と施しが人に与える効き目を、髪油、武器、時雨という身近なものにたとえます。膏沐は髪を整える油や洗髪料のことです。人の善を語れば人をうるおし、悪を暴けば武器よりも深く傷つけるというのは、うわさ話やインターネット上の言葉にもそのまま当てはまる戒めです。
この章句が説くこと
慎言善悪施し処世心術
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集醒・人を甘んぜしむるの語人を甘んぜしむるの語は、多く其の是非を論ぜず。人を激するの語は、多く其の利害を顧みず。
-
『酔古堂剣掃』集醒・好んで閨門を談ずる者好んで閨門を談じ、及び好んで亂を譏る者は、必ず鬼神の怒る所と為る。奇禍有るに非ざれば、則ち必ず奇窮有り。
-
『囲炉夜話』第百九十則・口を守ること瓶の如し一言は以て大禍を招くに足る、故に古人は口を守ること瓶の如く、惟だ其の覆墜を恐るるなり。 一行は以て終身を玷すに足る、故に古人は躬を飭ふること璧の若く、惟だ瑕疵有るを恐るるなり。
-
『幽夢影』巻下・諛ふも罵るも口を以てし筆を以てする毋れ已むを得ずして之に諛ふ者は、寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。耐ふべからずして之を罵る者も、亦寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。
-
『呻吟語』内篇・倫理・慎言の地は、惟だ家庭を要と為す慎言の地は、惟だ家庭を要と為す。應に言を慎むべきの人は、惟だ妻子・僕隸を要と為す。此れ理亂の原にして禍福の本なり。人往往にして之を忽にす、悲しいかな。
-
『酔古堂剣掃』集醒・聖人の言は簡なり神人の言は微、聖人の言は簡、賢人の言は明、眾人の言は多、小人の言は妄なり。