格言聯璧 / 接物類・盛喜の中に人に物を許す勿かれ
毋犯士夫公怒,犯則怒不可救。 喜時說盡知心,到失歡須防發泄。 惱時說盡傷心,恐再好自覺羞慚。 盛喜中勿許人物,盛怒中勿答人言。
新字:毋犯士夫公怒,犯則怒不可救。 喜時説尽知心,到失歓須防発泄。 悩時説尽傷心,恐再好自覚羞慚。 盛喜中勿許人物,盛怒中勿答人言。
書き下し
士夫の公怒を犯す毋かれ、犯せば則ち怒り救ふべからず。 喜ぶ時に知心を說き盡くせば、歡びを失ふに到りて須らく發泄を防ぐべし。 惱む時に傷心を說き盡くせば、恐らくは再び好くして自ら羞慚を覺えん。 盛喜の中に人に物を許す勿かれ、盛怒の中に人の言に答ふる勿かれ。
現代語訳
士大夫たちの公の怒りを買ってはいけません。買えばその怒りは収めようがありません。 仲の良いときに心の内を話し尽くすと、仲違いしたときに、それを言いふらされるのを防がなければならなくなります。 腹を立てたときに相手を傷つける言葉を言い尽くすと、また仲直りしたときに、自分で恥ずかしく思うことになるでしょう。 大喜びの最中に人に物を約束してはいけません。激しく怒っている最中に人の言葉に答えてはいけません。
解説
一句目は前の単位の「小人の私恩を受くるな」と対になり、士大夫の公の怒りを犯すなと言います。私的な恩も公的な怒りも、一度関われば取り返しがつかないという点で共通しています。次の対句は、感情が高ぶったときの言葉の危うさを描きます。親しいときに秘密を話しすぎれば仲違いしたときに漏らされ、怒ったときに言いすぎれば仲直りしたときに気まずくなる。どちらも、関係が変わりうることを忘れて言葉を尽くした結果です。最後の句は、喜びの絶頂で約束し、怒りの絶頂で返事をするなという、とても実用的な戒めです。菜根譚にも、喜びに乗じて軽々しく約束するなという句があります。感情が高ぶったときは、返事を一晩置くだけで多くの失敗を防げます。
この章句が説くこと
慎言自制接物交友冷静
関連する章句
-
『幽夢影』巻下・諛ふも罵るも口を以てし筆を以てする毋れ已むを得ずして之に諛ふ者は、寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。耐ふべからずして之を罵る者も、亦寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。
-
『酔古堂剣掃』集醒・好んで閨門を談ずる者好んで閨門を談じ、及び好んで亂を譏る者は、必ず鬼神の怒る所と為る。奇禍有るに非ざれば、則ち必ず奇窮有り。
-
『囲炉夜話』第百九十則・口を守ること瓶の如し一言は以て大禍を招くに足る、故に古人は口を守ること瓶の如く、惟だ其の覆墜を恐るるなり。 一行は以て終身を玷すに足る、故に古人は躬を飭ふること璧の若く、惟だ瑕疵有るを恐るるなり。
-
『呻吟語』内篇・倫理・慎言の地は、惟だ家庭を要と為す慎言の地は、惟だ家庭を要と為す。應に言を慎むべきの人は、惟だ妻子・僕隸を要と為す。此れ理亂の原にして禍福の本なり。人往往にして之を忽にす、悲しいかな。
-
『酔古堂剣掃』集醒・人を甘んぜしむるの語人を甘んぜしむるの語は、多く其の是非を論ぜず。人を激するの語は、多く其の利害を顧みず。
-
『酔古堂剣掃』集醒・聖人の言は簡なり神人の言は微、聖人の言は簡、賢人の言は明、眾人の言は多、小人の言は妄なり。