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山鹿語類 / 士道・詳事物

師嘗曰。事物の用各天地の一太極を具して、而其所發見さま〳〵の用こゝにあらはる。草は同く草にして、蘭に秀でたる有。菊に隱逸の形有。牡丹に富貴の相有り。蓮に君子の德有り。木は同く木にして、松栢は棟梁の器あり。梧桐は清淨の質有り。梅に清香有。櫻に艶容有。柳は綠なれば、花は紅をあらはす。其品々擧て云べからずして、各其材あり。君子仰で天を視、伏して地を觀、中にして人物を察すと云。是天地人物の間の事わざを詳に究め明にして、而後に聖人の才こゝに逞しく、衆理そなはりて万物に應ずるゆゑん也。

新字:師嘗曰。事物の用各天地の一太極を具して、而其所発見さま〳〵の用こゝにあらはる。草は同く草にして、蘭に秀でたる有。菊に隠逸の形有。牡丹に富貴の相有り。蓮に君子の徳有り。木は同く木にして、松栢は棟梁の器あり。梧桐は清浄の質有り。梅に清香有。桜に艶容有。柳は緑なれば、花は紅をあらはす。其品々挙て云べからずして、各其材あり。君子仰で天を視、伏して地を観、中にして人物を察すと云。是天地人物の間の事わざを詳に究め明にして、而後に聖人の才こゝに逞しく、衆理そなはりて万物に応ずるゆゑん也。

書き下し

師嘗曰。事物の用各天地の一太極を具して、而其所発見さま〳〵の用こゝにあらはる。草は同く草にして、蘭に秀でたる有。菊に隠逸の形有。牡丹に富貴の相有り。蓮に君子の徳有り。木は同く木にして、松栢は棟梁の器あり。梧桐は清浄の質有り。梅に清香有。桜に艶容有。柳は緑なれば、花は紅をあらはす。其品々挙て云べからずして、各其材あり。君子仰で天を視、伏して地を観、中にして人物を察すと云。是天地人物の間の事わざを詳に究め明にして、而後に聖人の才こゝに逞しく、衆理そなはりて万物に応ずるゆゑん也。

現代語訳

先生はかつてこう言われた。事物の働きは、それぞれが天地の一つの太極(根源の理)を備えていて、それが発して現れるところにさまざまな働きが現れる。草は同じ草でも、蘭には秀でたものがあり、菊には隠逸の形があり、牡丹には富貴の相があり、蓮には君子の徳がある。木は同じ木でも、松や柏には棟木や梁になる器量があり、梧桐(あおぎり)には清らかな質があり、梅には清い香りがあり、桜にはあでやかな姿がある。柳が緑であれば、花は紅を現す。その品々は数え挙げきれず、それぞれにその材がある。「君子は仰いで天を視、伏して地を観、その間にあって人や物を察する」という。これは天地人物の間の事柄をつまびらかに究めて明らかにし、そのうえで聖人の才能がここにたくましく発揮され、多くの理が備わって万物に応じることができる理由である。

解説

事物を詳しく知ることの必要を、草木の比喩から説き起こす章句である。どの事物も同じ太極を備えながら、蘭・菊・牡丹・蓮、松柏・梧桐・梅・桜とそれぞれ異なる材を持つとする。易の繋辞伝を踏まえた「仰いで天を視、伏して地を観る」の句を引き、天地人物を詳しく察してこそ聖人の才が働くと述べる。理一分殊の考えを受けつつ、個々の違いを見ることに力点を置くのが素行の特色である。現代でいえば、部下一人ひとりの持ち味を見分ける眼も、この詳しさから生まれる。

この章句が説くこと

事物才太極観察士道格物

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