言志四録 / 言志録 第九十一条 月を看て宇宙を想ふ
人看月。皆徒看也。須於此想宇宙無窮之概。乙亥中秋月下錄
新字:人看月。皆徒看也。須於此想宇宙無窮之概。乙亥中秋月下録
書き下し
人の月を看るは、皆徒らに看るなり。須らく此に於て宇宙無窮の概を想ふべし。(乙亥中秋、月下に録す)
現代語訳
人が月を眺めるのは、みなただ漫然と眺めているにすぎない。月を見るときには、そこで宇宙の果てしない有様を思い描くべきである。(文化十二年〈一八一五〉の中秋、月の下で記す)
解説
末尾の割注から、文化十二年の中秋の名月の夜、一斎四十四歳の作とわかります。名月を愛でる習いは古くからありますが、一斎は、ただ美しいと眺めて終わるのでは「徒らに看る」にすぎないと言います。月を見るなら、その向こうに広がる果てしない宇宙に思いを致せというのです。天を師とし、自然の中に道理を見ようとした一斎らしい視線で、目の前のものを入口に、より大きな全体へと思いを広げる姿勢が示されています。日々目にしているものを、ただ見ているだけになっていないか、その背後の大きな構造にまで考えを及ぼしているか、ふと立ち止まらせる一条です。
この章句が説くこと
観察宇宙天視野自然に学ぶ
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