山鹿語類 / 士道・剛操
能く義利の分を辨じて、安んじてこれを行は君子也。君子は世に不易得。勉强して其惑を去ること學者の困で知る處也。學者大丈夫に至らんことを思はん輩は、常に剛操を守て、好惡にをいて心の存亡を詳にし、万物の下に不屈が如く可心得也。古人生質に因て自然に剛操の徒ありといへども、是又一方に秀て一方にくらし。學人古人の生質に秀でたる處あるを、今日身上に取用て、彌其究理をきはめ、能事物の間に推し移るが如く可仕也。士として大丈夫のきたいに不練得、學も亦碌々たる小書生の志のみ也。何ぞ天下の大器識たらん。尤可味也。
新字:能く義利の分を弁じて、安んじてこれを行は君子也。君子は世に不易得。勉強して其惑を去ること学者の困で知る処也。学者大丈夫に至らんことを思はん輩は、常に剛操を守て、好悪にをいて心の存亡を詳にし、万物の下に不屈が如く可心得也。古人生質に因て自然に剛操の徒ありといへども、是又一方に秀て一方にくらし。学人古人の生質に秀でたる処あるを、今日身上に取用て、弥其究理をきはめ、能事物の間に推し移るが如く可仕也。士として大丈夫のきたいに不練得、学も亦碌々たる小書生の志のみ也。何ぞ天下の大器識たらん。尤可味也。
書き下し
能く義利の分を弁じて、安んじてこれを行は君子也。君子は世に不易得。勉強して其惑を去ること学者の困で知る処也。学者大丈夫に至らんことを思はん輩は、常に剛操を守て、好悪にをいて心の存亡を詳にし、万物の下に不屈が如く可心得也。古人生質に因て自然に剛操の徒ありといへども、是又一方に秀て一方にくらし。学人古人の生質に秀でたる処あるを、今日身上に取用て、弥其究理をきはめ、能事物の間に推し移るが如く可仕也。士として大丈夫のきたいに不練得、学も亦碌々たる小書生の志のみ也。何ぞ天下の大器識たらん。尤可味也。
現代語訳
よく義と利の区別をわきまえて、安んじてこれを行うのは君子である。君子は世になかなか得られない。努め励んでその惑いを去るのは、学ぶ者が苦しんで知るところである。学ぶ者で大丈夫に至ろうと思う者は、常に剛操を守り、好き嫌いにおいて心が保たれているか失われているかを詳しく見て、万物の下に屈しないように心得るべきである。古人には生まれつきの質によって自然に剛操の人々があったけれども、これもまた一方に秀でて一方に暗い。学ぶ者は古人の生まれつきの質の秀でたところを、今日の自分の身の上に取り用いて、いよいよその究理を極め、よく物事の間に推し移していくようにすべきである。士として大丈夫としての鍛えを練り得なければ、学問もまた平凡な小書生の志にすぎない。どうして天下の大きな器量と見識となれようか。もっとも味わうべきことである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『童子問』卷上童子曰く、甚だしいかな学問の大なるや。願はくは其の詳を聞かんと。曰く、宋明の儒先皆性を尽くすを以て極則と為して、学問の功の益大なることを知らず。殊に知らず、己の性は限り有りて、天下の道は窮まり無きことを。限り有るの性を以て、窮まり無きの道を尽くさんと欲す。則ち学問の功に非ざれば、得べからざるなり。此れ孔門の専ら教を貴ぶ所以なり。中庸に曰く、唯だ天下の至誠のみ、能く其の性を尽くすと為す。能く其の性を尽くせば、則ち能く人の性を尽くす。能く人の性を尽くせば、則ち能く物の性を尽くす。能く物の性を尽くせば、則ち以て天地の化育を賛くべし。以て天地の化育を賛くべければ、則ち以て天地と参なるべしと。所謂能く其の性を尽くすとは、吾が性の分内に就きて言ふ。其の人物の性を尽くして、天地の化育を賛くるに至りては、則ち亦た我が性を尽くすの推しと雖も、豈に徒らに我が性を尽くすのみならんや。夫れ人の我に与ける、体を異にし気を殊にして、其の疾痛病癢、皆相関らず。況んや人の物に与ける、類を異にし形を殊にす、何ぞ相干渉せん。財成輔相して天地の道に、万物をして各其の性を遂げしむと謂ふは、則ち可なり。之を我が性を尽くすと謂ひて、可ならんや。然らば則ち唯だ我が性を尽くすのみにして、学問の功に由るに非ずんば、得べからざること明らかなり。
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言志四録・言志録 第百九十九条 心の智愚は学びて変ずべし人の受くる所の気、其の厚薄の分数は、大抵相若く。躯の大小、寿の脩短、力の強弱、心の智愚の如き、大いに相遠き者無し。其の間一処の受くること厚き者有れば、皆之を非常と謂ふ。非常は則ち姑く之を置く。常人の如きに就きては、躯と寿と力との分数は、之を奈何ともすべからず。独り心の智愚に至りては、学びて之を変化すべし。故に博く学び、審かに問ひ、慎みて思ひ、明らかに弁じ、篤く行ふ。人一たび十たびすれば、己は之を百たび千たびす。果たして此の道を能くせば、愚なりと雖も必ず明らかに、柔なりと雖も必ず強からん。以て漸く非常の域に進むべし。蓋し此の理有り。但だ常人は多く遊惰にして然ること能はず。豈に亦天に算籌有るか。
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『君子訓』巻之上一真西山曰、人の君たるもの、大学を知らずんばあるべからず。人の臣たるもの、大学を知らずんばあるべからずと言へり。君も臣も、身を修め国家天下を治むる道、大学の書にそなはれり。是を読みて受用せずんばあるべからず。又中庸の九経に、身を修め人を治むる道備れり、考ふべし。此二書を能く読みて、受用し行はば、外に求めずとも、其要は此うちにあるべし。
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『翁問答』下卷之本体充曰、十三経も書数おほく候て、凡夫の分にて皆まで学び候事及びがたく覚へ候そのうちにて一二巻まなび候て大綱の得心なりやすき書はおはしまさず候や。師の曰、本来易経一部をおしひろめたる十三経なれば、易経をよく学びたるがよろし、しかれども易経は簡奥玄妙にして、凡夫のとりいりなりがたきによつて、孝経、大学中庸を心にて心をよみよく学びぬれば大綱の得心なりやすし、三書学びて余力あるものは、其力とひまに随ひて語孟をまなぶべし、さて又余力あるものは十三経をみな学びたるがよし、
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『囲炉夜話』第二百一則・渾金璞玉の如し才有らば必ず韜藏す、渾金璞玉の如く、闇然として日に章かなり。 學を為すに間斷無し、流水行雲の如く、日に進みて已まざるなり。
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