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和俗男子訓 / 巻二・倹約と、人材を第一とする心

一前編に記せしごとく、もつぱら、儉約をまもりて、無用の事に、米錢をついやすことなかれ、むかし唐の太祖のとき、金玉にて飾れる、鞍轡を、たてまつるものあり、太祖これをしりぞけて、いはく、われもとむるところのものは、文武の材能なり、用るところのものは、穀粟布帛なり、他の寶玩は、このむところにあらずと、しりぞけられたり、人君は、まづ文武の士をあげて、賞すべし、次に米穀布帛をたくはえて、不虞の備とすべし、(山城國宇治に、辻閑入齋といふ者あり、家もさのみまづしからざりけるが、冬はあたらしき木綿布子、夏はあたらしき太布を着たり、近所のものども、足下は、上つかたへも、つれに參るなれば、少し身なつくろへかしといへば、いかにつくろふとも、上つかたの御目よりは、なほ不足におぼすべし、麁相なりとても、あたらしきものゝよしとして、一生美服を着せざりしとかや、延寶年中の事なり、)

新字:一前編に記せしごとく、もつぱら、倹約をまもりて、無用の事に、米銭をついやすことなかれ、むかし唐の太祖のとき、金玉にて飾れる、鞍轡を、たてまつるものあり、太祖これをしりぞけて、いはく、われもとむるところのものは、文武の材能なり、用るところのものは、穀粟布帛なり、他の宝玩は、このむところにあらずと、しりぞけられたり、人君は、まづ文武の士をあげて、賞すべし、次に米穀布帛をたくはえて、不虞の備とすべし、(山城国宇治に、辻閑入斎といふ者あり、家もさのみまづしからざりけるが、冬はあたらしき木綿布子、夏はあたらしき太布を着たり、近所のものども、足下は、上つかたへも、つれに参るなれば、少し身なつくろへかしといへば、いかにつくろふとも、上つかたの御目よりは、なほ不足におぼすべし、麁相なりとても、あたらしきものゝよしとして、一生美服を着せざりしとかや、延宝年中の事なり、)

書き下し

一前編に記せしごとく、もつぱら、儉約をまもりて、無用の事に、米錢をついやすことなかれ、むかし唐の太祖のとき、金玉にて飾れる、鞍轡を、たてまつるものあり、太祖これをしりぞけて、いはく、われもとむるところのものは、文武の材能なり、用るところのものは、穀粟布帛なり、他の寶玩は、このむところにあらずと、しりぞけられたり、人君は、まづ文武の士をあげて、賞すべし、次に米穀布帛をたくはえて、不虞の備とすべし、(山城國宇治に、辻閑入齋といふ者あり、家もさのみまづしからざりけるが、冬はあたらしき木綿布子、夏はあたらしき太布を着たり、近所のものども、足下は、上つかたへも、つれに參るなれば、少し身なつくろへかしといへば、いかにつくろふとも、上つかたの御目よりは、なほ不足におぼすべし、麁相なりとても、あたらしきものゝよしとして、一生美服を着せざりしとかや、延寶年中の事なり、)

現代語訳

前編に記したように、もっぱら倹約を守って、無用のことに米や銭を費やしてはいけません。昔、唐の太祖のとき、金や玉で飾った鞍や轡を献上する者がいました。太祖はこれを退けて言いました。私が求めるものは、文武の才能であり、用いるものは、穀物や布帛である。他の宝玩は、好むところではない、と退けました。人の上に立つ者は、まず文武の士を挙げて賞すべきです。次に米穀や布帛を蓄えて、不測の事態に備えとすべきです。(山城国宇治に、辻閑入斎という者がいました。家はさほど貧しくなかったのですが、冬は新しい木綿の布子、夏は新しい太布を着ていました。近所の者たちが、あなたは上の方へもお連れ立ちで参られるのだから、少し身なりを整えなさい、と言うと、どれほど整えても、上の方の御目からは、やはり不足とお思いになるでしょう、粗末であっても、新しいものを良しとして、一生美しい衣服を着なかったということです。延宝年間のことです。)

解説

人の上に立つ者が最初に重んじるのは、人材であって、飾りではないという教えです。唐の太祖の話は、豪華な贈り物を退け、人と備えに価値を置いた例です。辻閑入斎の話は、身なりに構わなくても品格は保てるという例として添えられています。管理職は、見栄にかかる経費を見直し、人材の育成と不測への備えに資源を向ける判断を、日常の予算や時間配分に反映させたいものです。

この章句が説くこと

和俗男子訓井沢蟠竜倹約人材重視備え唐の太祖

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