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和俗男子訓 / 巻二・場にふさわしくない芸を褒めない

一近ごろ、ある出家、兒に能をいたさせて、人に見せけるに、其客のうちに、よそみして、しかと見ざる人あり、外の客はさても、器用や、而白やと、褒しに、其人のいはく、出家のうちに、つかはれむ兒の、學問すぐれたりとあらんは、褒つべし、左はなくして、いやしき猿樂わざをなせるを、いかでよしとは、申すべきと、あらゝかにいひけるに、一座輿さめて、院主も、本意なく思ひしとなん、

新字:一近ごろ、ある出家、児に能をいたさせて、人に見せけるに、其客のうちに、よそみして、しかと見ざる人あり、外の客はさても、器用や、而白やと、褒しに、其人のいはく、出家のうちに、つかはれむ児の、学問すぐれたりとあらんは、褒つべし、左はなくして、いやしき猿楽わざをなせるを、いかでよしとは、申すべきと、あらゝかにいひけるに、一座輿さめて、院主も、本意なく思ひしとなん、

書き下し

一近ごろ、ある出家、兒に能をいたさせて、人に見せけるに、其客のうちに、よそみして、しかと見ざる人あり、外の客はさても、器用や、而白やと、褒しに、其人のいはく、出家のうちに、つかはれむ兒の、學問すぐれたりとあらんは、褒つべし、左はなくして、いやしき猿樂わざをなせるを、いかでよしとは、申すべきと、あらゝかにいひけるに、一座輿さめて、院主も、本意なく思ひしとなん、

現代語訳

近ごろ、ある出家が、稚児に能を演じさせて人に見せたところ、その客の中によそ見をして、しっかり見ていない人がいました。ほかの客は、さても器用だ、面白いと褒めたのですが、その人が言うには、出家の仲間のうちで使われる稚児が、学問に優れているというのなら褒めるべきです、そうではなくて、卑しい猿楽の技をするのを、どうしてよいと申せましょう、と荒々しく言ったので、一座は興ざめして、院主も不本意に思ったということです。

解説

本分から外れた芸を褒める客と、それを退けた一人の対比が描かれます。ただ、一座を白けさせた言い方の荒さも書かれており、正しさを伝えるにも場と言葉の選び方が要る、と読むこともできます。管理職は、本来の役割に外れた成果や技能を無条件に評価していないか、また正論を伝える際に相手や場への配慮を欠いていないかを、振り返りたいところです。

この章句が説くこと

和俗男子訓井沢蟠竜本分評価場の空気正論

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