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甲陽軍鑑 / 品第四十

爰におひて高坂彈正いはく、人をほむるも、そしるも我位ほどさたする時は被官といへども、よき者へは惡大將心ざし及ばさる故、めもさながらとゞかぬなり、惣別よき大將は三萬·四萬の人數をつれても五千の敵に氣遣給ふ事、主の小人數にて大軍を引請、どこぞのつがひに切てとらんと思ふたる大身のむかしより、いかほど大きく成給ひて後までも氣遣なさるゝ事、我意地にあてがひてかくの分なり、

新字:爰におひて高坂弾正いはく、人をほむるも、そしるも我位ほどさたする時は被官といへども、よき者へは悪大将心ざし及ばさる故、めもさながらとゞかぬなり、惣別よき大将は三万·四万の人数をつれても五千の敵に気遣給ふ事、主の小人数にて大軍を引請、どこぞのつがひに切てとらんと思ふたる大身のむかしより、いかほど大きく成給ひて後までも気遣なさるゝ事、我意地にあてがひてかくの分なり、

書き下し

爰におひて高坂弾正いはく、人をほむるも、そしるも我位ほどさたする時は被官といへども、よき者へは悪大将心ざし及ばさる故、めもさながらとゞかぬなり、惣別よき大将は三万·四万の人数をつれても五千の敵に気遣給ふ事、主の小人数にて大軍を引請、どこぞのつがひに切てとらんと思ふたる大身のむかしより、いかほど大きく成給ひて後までも気遣なさるゝ事、我意地にあてがひてかくの分なり、

現代語訳

ここにおいて高坂弾正が言うには、人を褒めるも謗るも、我が位ほどに沙汰する時は、被官と言えども、よい者へは悪大将の志が及ばないゆえに、目もさながら届かぬのである。総別、よい大将は三万・四万の人数を連れても五千の敵に気遣い給う事。主が小人数にて大軍を引き請け、どこぞのつがいに斬って取らんと思うた大身の昔より、いかほど大きくなり給いて後までも気遣いなさる事は、我が意地にあてがってこの分である。

解説

人の評は、評する側の位までしか届かない。だから悪い大将には、よい者の値打ちが見えない。よい大将のほうは、大軍を連れていても小勢の敵を気遣う。小勢で大軍に当たっていた頃の自分の意地に照らして、相手を測るからだという。人の評は、評する側の位までしか届かない。小勢で大軍に当たっていた頃の自分の意地に照らすから、よい大将は小勢の敵を気遣うという。

この章句が説くこと

評価気遣い大将小勢高坂

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