尉繚子 / 兵令上
兵者,凶器也;爭者,逆德也。事必有本,故王者伐暴亂,本仁義焉。戰國則以立威、抗敵、相圗,而不能廢兵也。
新字:兵者,凶器也;争者,逆徳也。事必有本,故王者伐暴乱,本仁義焉。戦国則以立威、抗敵、相図,而不能廃兵也。
書き下し
兵なる者は、凶器なり。争なる者は、逆徳なり。事には必ず本有り、故に王者の暴乱を伐つは、仁義に本づく。戦国は則ち以て威を立て、敵に抗し、相図りて、兵を廃する能はざるなり。
現代語訳
兵とは不吉な道具であり、争いとは徳にそむく行いである。物事には必ず根本がある。だから王者が乱暴な者を討つのは、仁義に根ざしている。ところが戦国の世では、威を立て、敵に抵抗し、互いに相手を図るために、兵をやめることができないのである。
解説
兵令上篇の冒頭で、兵は凶器、争いは逆徳と言い切る。厳しい軍令を並べる尉繚子が、まず戦いそのものを不吉なものと位置づけているのは注目してよい。王者が暴乱を討つのは仁義に基づくからこそ正当化されるのであり、根本のない戦いは許されない。ただし戦国の現実では、威を立て敵に対抗し互いに謀り合うために、兵を廃することはできないとも認める。理想と現実を並べて置くこの姿勢は、梁の恵王に説いたとされる尉繚の、儒家的な仁義と法家的な富国強兵の間に立つ性格をよく表している。現代の競争も同じで、争いそのものを目的にすれば組織は荒れる。何のために競うのかという根本を持ち、それでも競争から逃げられない現実を直視することが、健全な戦い方の出発点になる。
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