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尉繚子 / 兵教下

今戰國相攻,大伐有德。自伍而兩,自兩而師,不一其令,率俾民心不定,徒尚驕侈,謀患辨訟,吏究其事,累且敗也。日暮路逺,還有剉氣,師老將貪,爭掠易敗。凡將輕、壘卑、衆動,可攻也;將重、壘髙、衆懼,可圍也。凡圍必開其小利,使漸夷弱,則節吝有不食者矣。衆夜擊者,驚也;衆避事者,離也。待人之救,期戰而蹙,皆心失而氣傷也。傷氣敗軍,曲謀敗國。

新字:今戦国相攻,大伐有徳。自伍而両,自両而師,不一其令,率俾民心不定,徒尚驕侈,謀患弁訟,吏究其事,累且敗也。日暮路遠,還有剉気,師老将貪,争掠易敗。凡将軽、塁卑、衆動,可攻也;将重、塁高、衆懼,可囲也。凡囲必開其小利,使漸夷弱,則節吝有不食者矣。衆夜撃者,驚也;衆避事者,離也。待人之救,期戦而蹙,皆心失而気傷也。傷気敗軍,曲謀敗国。

書き下し

今戦国相攻め、大いに有徳を伐つ。伍よりして両、両よりして師、其の令を一にせず、率ね民心をして定まらざらしめ、徒らに驕侈を尚び、謀患辨訟し、吏其の事を究め、累ねて且に敗れんとす。日暮れ路遠く、還るに剉気有り、師老い将貪り、争掠して敗れ易し。凡そ将軽く、塁卑く、衆動けば、攻むべきなり。将重く、塁高く、衆懼るれば、囲むべきなり。凡そ囲むには必ず其の小利を開き、漸く夷弱ならしむれば、則ち節吝して食はざる者有り。衆夜撃つ者は、驚くなり。衆事を避くる者は、離るるなり。人の救を待ち、戦を期して蹙まるは、皆心失はれて気傷るるなり。気を傷れば軍を敗り、曲謀は国を敗る。

現代語訳

今、戦国の諸国は互いに攻め合い、徳のある国さえ大いに攻め立てている。伍から両へ、両から師へと編成しても、その命令を統一せず、おおむね民の心を定まらないままにし、いたずらにおごりと贅沢を好み、はかりごとを巡らせて争いや訴えを起こし、役人がその処理に追われ、損害を重ねて今にも敗れようとしている。日が暮れて道は遠く、引き返そうにも気勢はくじけ、軍は疲れ将は欲深く、略奪を争ってたやすく敗れる。およそ将が軽率で、塁が低く、兵が浮き足立っていれば、攻めてよい。将が重厚で、塁が高く、兵が恐れて守りに入っていれば、包囲するのがよい。およそ包囲するときは、必ず小さな利の逃げ道を開けておき、しだいに弱らせていけば、(城内では)食を切り詰めて食べられない者が出てくる。兵が夜に騒いで撃ちかかるのは、おびえているからである。兵が務めを避けるのは、心が離れているからである。他国の救援を待ち、戦いの期日を迎えて縮こまっているのは、みな心を失い気力が傷ついているからである。気力が傷つけば軍を敗り、ゆがんだはかりごとは国を敗る。

解説

兵教下篇の後段で、当時の諸国の軍が敗れていく姿を描き、攻めるべき敵と囲むべき敵の見分け方を示す。命令が統一されず、民心が定まらず、贅沢と訴訟に明け暮れ、疲れた軍と欲深い将が略奪を争う軍は、たやすく敗れる。敵の将が軽く塁が低く兵が動揺していれば攻め、将が重く塁が高く兵が恐れていれば囲む。囲むときは逃げ道となる小さな利を残してしだいに弱らせる。夜の騒ぎは恐れ、務めを避けるのは離反、救援頼みは気の衰えの表れと読む。最後の「気を傷れば軍を敗り、曲謀は国を敗る」は本篇の要約でもある。敵情を占いではなく兵の振る舞いから読む点に、尉繚子の合理主義がよく出ている。組織でも、士気の低下や指示の不統一は、外からの攻めより先に内側を崩していく。

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