尉繚子 / 兵教下
使人無得私語。諸罰而請不罰者,死;諸賞而請不賞者,死。」伐國必因其變。示之財,以觀其窮;示之弊,以觀其病。上乖下離,若此之類,是伐之因也。凡興師,必審内外之權,以計其去。兵有備闕,糧食有餘不足,校所出入之路,然後興師伐亂,必能入之。地大而城小者,必先收其地;城大而地窄者,必先攻其城。地廣而人寡者,則絶其阨;地窄而人衆者,則築大堙以臨之。
新字:使人無得私語。諸罰而請不罰者,死;諸賞而請不賞者,死。」伐国必因其変。示之財,以観其窮;示之弊,以観其病。上乖下離,若此之類,是伐之因也。凡興師,必審内外之権,以計其去。兵有備闕,糧食有余不足,校所出入之路,然後興師伐乱,必能入之。地大而城小者,必先収其地;城大而地窄者,必先攻其城。地広而人寡者,則絶其阨;地窄而人衆者,則築大堙以臨之。
書き下し
人をして私語するを得ること無からしむ。諸そ罰して罰せざるを請ふ者は、死す。諸そ賞して賞せざるを請ふ者は、死す」と。国を伐つには必ず其の変に因る。之に財を示して、以て其の窮を観る。之に弊を示して、以て其の病を観る。上乖き下離る、此の若きの類は、是れ伐つの因なり。凡そ師を興すには、必ず内外の権を審らかにして、以て其の去を計る。兵に備闕有り、糧食に余・不足有り、出入する所の路を校べ、然る後に師を興して乱を伐てば、必ず能く之に入る。地大にして城小なる者は、必ず先づ其の地を収む。城大にして地窄き者は、必ず先づ其の城を攻む。地広くして人寡き者は、則ち其の阨を絶つ。地窄くして人衆き者は、則ち大堙を築きて以て之に臨む。
現代語訳
(そして)人々にひそひそ話をさせないことだ。罰すべき者について罰しないよう願い出る者は死罪とし、賞すべき者について賞しないよう願い出る者も死罪とする」。国を討つには、必ずその国の変事に乗じる。財物を見せてその困窮ぶりを観察し、こちらの弱みを見せてその国の病(弱点)を観察する。上が道にそむき下が離れているというような類のことが、討つきっかけとなる。およそ軍を起こすには、必ず内外の力関係をよく調べて、出陣すべきかどうかを計る。兵の備えに欠けたところがあるか、兵糧に余りがあるか不足しているかを知り、出入りする道筋を比べ調べて、そのうえで軍を起こして乱れた国を討てば、必ず攻め入ることができる。土地が広く城が小さい国には、必ずまずその土地を奪い取る。城が大きく土地が狭い国には、必ずまずその城を攻める。土地が広く人が少ない国には、その要害の道を断つ。土地が狭く人が多い国には、大きな土の山を築いてそこから臨んで攻める。
解説
関連する章句
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尉繚子・兵教下今戦国相攻め、大いに有徳を伐つ。伍よりして両、両よりして師、其の令を一にせず、率ね民心をして定まらざらしめ、徒らに驕侈を尚び、謀患辨訟し、吏其の事を究め、累ねて且に敗れんとす。日暮れ路遠く、還るに剉気有り、師老い将貪り、争掠して敗れ易し。凡そ将軽く、塁卑く、衆動けば、攻むべきなり。将重く、塁高く、衆懼るれば、囲むべきなり。凡そ囲むには必ず其の小利を開き、漸く夷弱ならしむれば、則ち節吝して食はざる者有り。衆夜撃つ者は、驚くなり。衆事を避くる者は、離るるなり。人の救を待ち、戦を期して蹙まるは、皆心失はれて気傷るるなり。気を傷れば軍を敗り、曲謀は国を敗る。
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尉繚子・兵教下臣聞く、人君に必勝の道有り、故に能く并兼広大にして、以て其の制度を一にすれば、則ち威天下に加はる、と。十二有り。一に曰く連刑、同罪保伍を謂ふなり。二に曰く地禁、行道を禁止し、以て外奸を網するを謂ふなり。三に曰く全軍、甲首相附き、三五相同じくし、以て其の聯を結ぶを謂ふなり。四に曰く開塞、地を分かちて以て限り、各其の職に死して堅守するを謂ふなり。五に曰く分限、左右相禁じ、前後相待ち、垣車固めと為し、以て逆へ以て止むるを謂ふなり。六に曰く号別、前列は進むを務め、以て其の後の者と別ち、先登を争ひて次でざるを得ざるを謂ふなり。七に曰く五章、行列を彰明にし、始卒乱れざるを謂ふなり。八に曰く全曲、曲折相従ひ、皆分部有るを謂ふなり。九に曰く金鼓、功有るを興し、徳有るを致すを謂ふなり。十に曰く陳車、前矛を接連し、馬其の目を冒ふを謂ふなり。十一に曰く死士、衆軍の中の材智有る者、戦車に乗り、前後縦横し、奇を出だして敵を制するを謂ふなり。十二に曰く力卒、其の全曲を経し、麾かざれば動かざるを謂ふなり。此の十二の者教成れば、令を犯すは舎さず。兵弱きも能く之を強くし、主卑きも能く之を尊くし、令弊るるも能く之を起こし、民流るるも能く之を親しましめ、人衆きも能く之を治め、地大なるも能く之を守る。国車閫を出でず、組甲橐を出でずして、威天下を服す。兵に五致有り。将と為りては家を忘れ、垠を踰えては親を忘れ、敵を指しては身を忘れ、必死なれば則ち生き、勝を急ぐは下と為す。百人刃を被れば、行を陥れ陳を乱す。千人刃を被れば、敵を擒にし将を殺す。万人刃を被れば、天下に横行す。武王太公望に問ひて曰く、「吾少しく間にして人を用ふるの要を極めんと欲す」と。望対へて曰く、「賞は山の如く、罰は谿の如し。
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尉繚子・攻權戦ひて必ず勝たざれば、以て戦ひを言ふべからず。攻めて必ず抜かざれば、以て攻むるを言ふべからず。然らざれば、刑賞信ずるに足らざるなり。信は期の前に在り、事は未兆に在り、故に衆已に聚まれば虚しく散ぜず、兵已に出づれば徒らに帰らず。
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尉繚子・兵教上民をして国門の限を背にし、死生の分を決せしめ、之に死して疑はざるを教ふる者は、以有るなり。守る者をして必ず固く、戦ふ者をして必ず闘ひ、奸謀作らず、姦民語らず、令行はれて変無く、兵行はれて猜無く、軽き者は霆の若く、敵に奮ふこと驚くが若くせしむ。功を挙げ徳を別つこと、明らかなること白黒の如く、
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尉繚子・戰威奪ふとは、心の機なり。令とは、衆心を一にするなり。衆審らかならざれば、則ち数々変ず。数々変ずれば、則ち令出づと雖も、衆信ぜず。故に之に令するの法は、小過は更むる無く、小疑は中(あ)つる無し。故に上に疑令無ければ、則ち衆は二聴せず。動くに疑事無ければ、則ち衆は二志せず。未だ其の心を信ぜずして、能く其の力を得る者有らざるなり。未だ其の力を得ずして、能く其の死戦を致す者有らざるなり。故に国に必ず礼・信・親・愛の義有れば、則ち饑を以て飽に易(か)ふべし。国に必ず孝・慈・廉・恥の俗有れば、則ち死を以て生に易ふべし。古の民を率ゐるは、必ず礼信を先にして爵禄を後にし、廉恥を先にして刑罰を後にし、親愛を先にして其の身を律す。故に戦ふ者は、心は身を率ゐて以て衆士を励ますに本づき、心の四肢を使ふが如し。志励まざれば、則ち士は節に死せず。士節に死せざれば、則ち衆戦はず。士を励ますの道は、民の生、厚くせざるべからざるなり。爵列の等、死喪の親、民の営む所、顕らかにせざるべからざるなり。必ずや民の生ずる所に因りて之を制し、民の営む所に因りて之を顕らかにし、田禄の実、飲食の親、郷里相勧め、死喪相救ひ、兵役相従ふ、此れ民の励む所なり。什伍をして親戚の如く、卒伯をして朋友の如くならしめ、止まれば堵牆の如く、動けば風雨の如く、車は轍を結ばず、士は踵を旋らさず、此れ本戦の道なり。地は民を養ふ所以なり、城は地を守る所以なり、戦ひは城を守る所以なり。故に耕に務むる者は、民饑ゑず。守りに務むる者は、地危ふからず。戦ひに務むる者は、城囲まれず。三者は、先王の本務なり。本務なる者は、兵最も急なり。故に先王は兵に専らにすること、五つ有り。委積多からざれば、則ち士行かず。賞禄厚からざれば、則ち民勧まず。武士選ばざれば、則ち衆強からず。器用備はらざれば、則ち力壮ならず。刑罰中らざれば、則ち衆畏れず。此の五者に務むれば、静かなれば能く其の固むる所を守り、動けば能く其の欲する所を成す。夫れ居を以て出づるを攻むるには、則ち居は重きを欲し、陳は堅きを欲し、発するは畢(ことごと)くなるを欲し、闘ふは斉しきを欲す。王国は民を富まし、覇国は士を富まし、僅かに存するの国は大夫を富まし、亡国は倉府を富ます。所謂上満ちて下漏れ、患ひ救ふ所無し。故に曰く、
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尉繚子・兵談土地の肥磽(ひかう)を量りて邑を立て、城を建つるに地に称(かな)へ、城を以て人に称へ、人を以て粟に称ふ。三つ相称へば、則ち内は以て固く守るべく、外は以て戦ひ勝つべし。外に戦ひ勝つは、備へ内に主たればなり。勝と備と相応ずること、猶ほ符節を合するがごとく、異なる故無きなり。兵を治むる者は、地に秘するが若く、天に邃(ふか)きが若く、無より生ず、故に之を開く。大なるも窕(ちょう)ならず、小なるも恢ならず。禁舎開塞に明らかなれば、民の流るる者も之に親しむ。地の任ぜられざる者は之を任ず。夫れ土広くして任ずれば則ち国富み、民衆くして制すれば則ち国治まる。富み治まる者は、民は軔を発せず、甲は出でて暴(さら)さずして、威は天下を制す。故に曰く、
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