韓非子 / 外儲説右下第三十五
夫賞所以勸之,而毁存焉;罰所以禁之,而譽加焉。民中立而不知所由,
新字:夫賞所以勧之,而毀存焉;罰所以禁之,而誉加焉。民中立而不知所由,
書き下し
夫れ賞は之を勧むる所以にして、毀存す。罰は之を禁ずる所以にして、誉加はる。民中立して由る所を知らず、
現代語訳
賞は人を励ますためのものなのに、そこに謗りがつきまとい、罰は人を禁じるためのものなのに、そこに誉れが加わる。そうなると民は中途で立ちすくみ、何に従えばよいか分からなくなる。
解説
延陵卓子の車を見た造父が涙を流して語る言葉の中心部分です。前に鉤、後ろに突き棒のある車では、馬は進んでも退いても痛めつけられ、行き場を失います。それと同じく、賞を与えられる行いが世間では謗られ、罰を受ける行いが世間では誉められるなら、民はどちらに従えばよいか分からず立ちすくむ、というのです。韓非は他の篇でも、君主の賞罰と世間の毀誉が食い違うことを繰り返し批判しており、賞と誉、罰と毀は必ず一致させよと説きます。次の単位で「此れ亦聖人の為に泣く所なり」と結ばれます。組織でも、評価制度で褒められる行動が職場の空気では白い目で見られるなら、人は動けなくなります。制度と文化のずれを考えるうえで大切な一節です。
この章句が説くこと
一貫性賞罰評価制度毀誉一致ダブルバインド
関連する章句
-
『韓非子』外儲説右下第三十五此れ亦聖人の為に泣く所なり」と。一に曰く、延陵卓子蒼龍と翟文との乗に乗る、前には則ち錯飾有り、後には則ち利錣有り、進めば則ち之を引き、退けば則ち之を筴うつ。馬前に進むを得ず、後に退くを得ず、遂に避けて逸す、因りて下りて刀を抽きて其の脚を刎ぬ。造父之を見て、泣き、終日食はず、因りて天を仰ぎて歎じて曰く、「筴は、之を進むる所以なるに、錯飾前に在り。引は、之を退くる所以なるに、利錣後に在り。今人主其の清潔を以て之を進め、其の左右に適はざるを以て之を退く。其の公正を以て之を誉め、其の聴従せざるを以て之を廃す。民懼れ、中立して由る所を知らず、此れ聖人の為に泣く所なり」と。
-
『韓非子』難一第三十六今赫は僅かに驕侮せざるのみにして、襄子之を賞するは、是れ賞を失うなり。明主は賞を無功に加えず、罰を無罪に加えず。
-
『韓非子』六反第四十六君人者民を足らすと雖も、足らして天子為らしむる能はず、而して桀未だ必ずしも天子為るを以て足れりと為さざるなり、則ち民を足らすと雖も、何ぞ以て治と為すべけんや。故に明主の国を治むるや、其の時事に適ひて以て財物を致し、其の税賦を論じて以て貧富を均しくし、其の爵禄を厚くして以て賢能を尽くし、其の刑罰を重くして以て姦邪を禁じ、民をして力を以て富を得、事を以て貴を致し、過を以て罪を受け、功を以て賞を致さしめて、慈恵の賜を念はざらしむ、此れ帝王の政なり。人皆寐れば、則ち盲者も知られず。皆嘿すれば、則ち喑者も知られず。覚めて之をして視しめ、問ひて之をして対へしむれば、則ち喑盲者窮す。其の言を聴かざれば、則ち無術者も知られず。其の身に任ぜざれば、則ち不肖者も知られず。
-
孫子・行軍篇數々賞する者は、窘するなり。數々罰する者は、困しむなり。先に暴にして後に其の衆を畏るる者は、不精の至りなり。来たりて委謝する者は、休息を欲するなり。
-
『墨子』明鬼下故に昔者、殷王紂、貴きこと天子と為り、富は天下を有ち、勇力の人、費中・惡来・崇侯虎有りて、指寡して人を殺す。人民の衆きこと兆億、侯として厥の澤陵に盈つ。然れども此を以て鬼神の誅を圉ぐ能わず。此れ吾が謂う所の鬼神の罰は、富貴衆强・力勇强武・堅甲利兵と為す可からずとは、此れなり。且つ禽艾の之を道いて曰く、「璣を得ること小なる無く、宗を滅ぼすこと大なる無し」と。則ち此れ鬼神の賞する所は、小なる無く必ず之を賞し、鬼神の罰する所は、大なる無く必ず之を罰するを言うなり。
-
『韓非子』姦劫弒臣第十四人焉んぞ能く安利の道を去りて危害の処に就かんや。国を治むること此くの若く其れ過てり。而して上、下の姦無く、吏の法を奉ずることを欲するも、其の得べからざること亦明らかなり。故に左右、貞信の以て安利を得べからざるを知れば、必ず曰く、「我忠信を以て上に事へ、功労を積みて安きを求むるは、是れ猶盲にして黒白の情を知らんと欲するがごとし、必ず幾からず。若し道を以て化し正理を行ひ、富貴に趨かず、上に事へて安きを求むるは、是れ猶聾にして清濁の声を審らかにせんとするがごとし、愈幾からず。二者以て安きを得べからずんば、我安んぞ能く相比周し、主上を蔽ひ、姦私を為して以て重人に適すること無からんや」と。此れ必ず人主の義を顧みず。其の百官の吏も亦方正の以て安きを得べからざるを知れば、必ず曰く、「我清廉を以て上に事へて安きを求むるは、規矩無くして方円を為さんと欲するが若し、必ず幾からず。若し法を守り朋党せずして官を治めて安きを求むるは、是れ猶足を以て頂を搔くがごとし、愈幾からず。二者以て安きを得べからずんば、能く法を廃し私を行ひて以て重人に適すること無からんや」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る