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尉繚子 / 將令

將軍受命,君必先謀於廟,行令于廷。君身以斧鉞授將曰:「左、右、中軍,皆有分職,若踰分而上請者,死。軍無二令,二令者誅,留令者誅,失令者誅。」將軍告曰:「出國門之外,期日中,設營表,置轅門,期之。如過時,則坐法。」將軍入營,則閉門清道,有敢行者誅,有敢髙言者誅,有敢不從令者誅。

新字:将軍受命,君必先謀於廟,行令于廷。君身以斧鉞授将曰:「左、右、中軍,皆有分職,若踰分而上請者,死。軍無二令,二令者誅,留令者誅,失令者誅。」将軍告曰:「出国門之外,期日中,設営表,置轅門,期之。如過時,則坐法。」将軍入営,則閉門清道,有敢行者誅,有敢高言者誅,有敢不従令者誅。

書き下し

将軍命を受くるに、君必ず先づ廟に謀り、令を廷に行ふ。君身ら斧鉞を以て将に授けて曰く、「左・右・中軍、皆分職有り、若し分を踰えて上請する者は、死す。軍に二令無く、二令する者は誅し、令を留むる者は誅し、令を失ふ者は誅す」と。将軍告げて曰く、「国門の外に出で、日中を期し、営表を設け、轅門を置き、之を期す。如し時を過ぐれば、則ち法に坐す」と。将軍営に入れば、則ち門を閉ぢ道を清め、敢へて行く者有れば誅し、敢へて高言する者有れば誅し、敢へて令に従はざる者有れば誅す。

現代語訳

将軍が任命を受けるとき、君主は必ずまず宗廟で謀り、朝廷で命令を発する。君主はみずから斧鉞(刑罰の権を象徴するまさかり)を将軍に授けてこう言う。「左軍・右軍・中軍にはそれぞれ職分がある。もし職分を越えて上に願い出る者がいれば、死罪とする。軍に二つの命令があってはならない。命令を二つ出す者は罰し、命令を留めて伝えない者は罰し、命令を取り落とす者は罰する」。将軍は(部下に)告げて言う。「都の門の外に出て、正午を期限として、陣営の標識を立て、轅門(車の轅を立てた陣門)を置いて、そこに集まれ。もし時刻に遅れれば、法によって罰する」。将軍が陣営に入れば、門を閉じて道を清め、勝手に歩き回る者がいれば罰し、大声で話す者がいれば罰し、命令に従わない者がいれば罰する。

解説

将令篇は、将軍の任命から陣営に入るまでの手続きを定めた条文である。君主は宗廟で謀議したうえで、みずから斧鉞を授け、処罰の権限が将軍にあることを示す。そのうえで職分を越えた直訴を禁じ、「軍に二令無し」と命令の一本化を求め、命令を重ねる者、留める者、失う者をすべて罰する。将軍は集合の刻限を示し、遅れれば法に照らす。陣営に入れば私語や勝手な往来さえ許さない。厳しい軍令の典型であり、統帥の権を将に一元化する思想は、将が有能で君主が口を出さなければ勝つという孫子の考えにも通じる。現代の組織でも、指示の出どころが複数あると現場は迷い、頭越しの直訴が横行すると指揮系統は崩れる。命令を一本にし、期限を明示し、守らなければ結果が伴うことが規律の基本である。

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