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長短経 / 出軍

夫將者、國之輔也、人之司命也。故曰、將不知兵、以其主與敵也、君不擇將、以其國與敵也。將既知兵、主既擇將、天子居正殿而召之、曰、「社稷安危、一在將軍、今某國不臣、願煩將軍應之。乃使太史卜齋擇日、授以斧鉞。君入太廟、西面而立、將軍北面而立。君親操鉞、持其首、授其柄、曰、「從是以上至天者、將軍制之。」乃復操柄、授與刃、曰、「從是以下至淵者、將軍制之。」將既受命、拜而報曰、「臣聞、國不可從外理、軍不可從中御。二心不可以事君、疑志不可以應敵。臣既受命、專斧鉞之威、臣不敢還諸。」乃辭而行、鑿凶門而出。故《司馬法》曰、「進退唯時、無曰寡人。」孫子曰、「將在軍、君命有所不受。」古語曰、「閫以内、寡人制之、閫以外、將軍制之。」《漢書》曰、「唯聞將軍之命、不聞天子之詔。」

新字:夫将者、国之輔也、人之司命也。故曰、将不知兵、以其主与敵也、君不択将、以其国与敵也。将既知兵、主既択将、天子居正殿而召之、曰、「社稷安危、一在将軍、今某国不臣、願煩将軍応之。乃使太史卜斎択日、授以斧鉞。君入太廟、西面而立、将軍北面而立。君親操鉞、持其首、授其柄、曰、「従是以上至天者、将軍制之。」乃復操柄、授与刃、曰、「従是以下至淵者、将軍制之。」将既受命、拝而報曰、「臣聞、国不可従外理、軍不可従中御。二心不可以事君、疑志不可以応敵。臣既受命、専斧鉞之威、臣不敢還諸。」乃辞而行、鑿凶門而出。故《司馬法》曰、「進退唯時、無曰寡人。」孫子曰、「将在軍、君命有所不受。」古語曰、「閫以内、寡人制之、閫以外、将軍制之。」《漢書》曰、「唯聞将軍之命、不聞天子之詔。」

書き下し

夫れ将なる者は、国の輔なり、人の司命なり。故に曰く、将兵を知らざれば、其の主を以て敵に与う。君将を択ばざれば、其の国を以て敵に与う。将既に兵を知り、主既に将を択ばば、天子は正殿に居りて之を召して曰く「社稷の安危は、一に将軍に在り。今、某国臣たらず。願わくは将軍を煩わして之に応ぜん」と。乃ち太史をして卜斎して日を択ばしめ、授くるに斧鉞を以てす。君は太廟に入り、西面して立つ。将軍は北面して立つ。君親ら鉞を操り、其の首を持ち、其の柄を授けて曰く「是より以上天に至るまでは、将軍之を制せよ」と。乃ち復た柄を操り、刃を授与して曰く「是より以下淵に至るまでは、将軍之を制せよ」と。将既に命を受け、拝して報じて曰く「臣聞く、国は外より理むべからず、軍は中より御すべからず。二心は以て君に事うべからず、疑志は以て敵に応ずべからず。臣既に命を受け、斧鉞の威を専らにす。臣敢えて還るを請わず」と。乃ち辞して行き、凶門を鑿ちて出づ。故に司馬法に曰く「進退は唯だ時のみ、寡人と曰うこと無かれ」と。孫子曰く「将軍に在りては、君命も受けざる所有り」と。古語に曰く「閫以内は、寡人之を制し、閫以外は、将軍之を制す」と。漢書に曰く「唯だ将軍の命を聞き、天子の詔を聞かず」と。

現代語訳

将軍は国の補佐であり、人々の命をつかさどる者である。だから、将軍が兵を知らなければ主君を敵に差し出すことになり、君主が将軍を選ばなければ国を敵に差し出すことになる、と言う。将軍が兵を知り、君主が将軍を選んだなら、天子は正殿にいて将軍を呼び、「国家の安危は将軍一人にかかっている。いまある国が臣従しない。どうか将軍に対処してもらいたい」と言う。そして太史に占いと斎戒をさせて日を選び、斧と鉞を授ける。君主は太廟に入って西を向いて立ち、将軍は北を向いて立つ。君主は自ら鉞を取り、その頭を持って柄を渡し、「ここから上は天に至るまで、将軍が治めよ」と言う。また柄を持って刃を渡し、「ここから下は淵に至るまで、将軍が治めよ」と言う。将軍は命を受けると拝して答える。「国は外から治めることはできず、軍は中から操ることはできないと聞きます。二心では君に仕えられず、迷う心では敵に応じられません。私は命を受けて斧鉞の威を専らにします。戻ってお伺いを立てることはいたしません」。そして別れを告げて出発し、北の門を開けて出ていく。だから『司馬法』に「進退はただ時機による。君主の意向を言ってはならない」とあり、孫子は「将軍が軍にあるときは、君命でも受けないことがある」と言い、古い言葉に「宮門の内は君主が治め、宮門の外は将軍が治める」とあり、『漢書』に「ただ将軍の命令を聞き、天子の詔は聞かない」とある。

解説

将軍を任命する儀式は、権限を完全に渡すことを形にしたものでした。君主は鉞の柄を渡して天まで、刃を渡して淵まで将軍が治めよと言う。将軍は、軍は中から操れない、二度と伺いに戻らないと誓う。孫子の、将軍は君命も受けないことがある、という原則です。現場の状況は刻々と変わり、遠くの君主の指示を待っていては機を逃す。人を選ぶことに慎重であるほど、選んだ後は任せきる覚悟が必要なのです。

この章句が説くこと

出軍将軍委任権限移譲孫子現場判断

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