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尉繚子 / 武議

臨難決疑,揮兵指刃,此將事也。一劒之任,非將事也。」三軍成行,一舍而後成三舍,三舍之餘,如決川源。望敵在前,因其所長而用之。敵白者堊之,赤者赭之。吳起與秦戰,未合,一夫不勝其勇,前獲雙首而還。吳起立斬之。軍吏諫曰:「此材士也。」起曰:「材士則是也,非吾令也。」斬之。

新字:臨難決疑,揮兵指刃,此将事也。一劒之任,非将事也。」三軍成行,一舎而後成三舎,三舎之余,如決川源。望敵在前,因其所長而用之。敵白者堊之,赤者赭之。呉起与秦戦,未合,一夫不勝其勇,前獲双首而還。呉起立斬之。軍吏諫曰:「此材士也。」起曰:「材士則是也,非吾令也。」斬之。

書き下し

難に臨み疑ひを決し、兵を揮ひ刃を指す、此れ将の事なり。一剣の任は、将の事に非ざるなり。」三軍行を成し、一舎にして而る後に三舎を成し、三舎の余は、川源を決するが如し。敵の前に在るを望み、其の長ずる所に因りて之を用ふ。敵の白き者は之を堊(あく)し、赤き者は之を赭(しゃ)す。呉起秦と戦ふに、未だ合はざるに、一夫其の勇に勝へず、前(すす)みて双首を獲て還る。呉起立ちどころに之を斬る。軍吏諫めて曰く、「此れ材士なり。」起曰く、「材士なるは則ち是なり、吾が令に非ざるなり。」之を斬る。

現代語訳

危難に臨んで迷いを断ち、兵を振るい刃の向かう先を指し示す、これが将の仕事である。剣一振りを担うのは、将の仕事ではない。」全軍が隊列を整えて、一日の行程を進んでから三日の行程を重ね、三日の行程を過ぎれば、川の源を切り落としたような勢いとなる。前方に敵を見れば、その得意とするところに応じて(こちらの兵を)用いる。敵が白い旗印なら白土で(こちらも)白く塗り、赤い旗印なら赤土で赤く塗る。呉起が秦と戦ったとき、まだ両軍がぶつからないうちに、一人の男が自分の勇気を抑えきれず、前に出て敵の首を二つ取って帰ってきた。呉起はただちにこの男を斬ろうとした。軍吏が諫めて言った。「この者は有能な兵士である。」呉起は言った。「有能な兵士であることはそのとおりだ。だが私の命令によるものではない。」そして斬った。

解説

武議篇の結びで、呉起の二つの逸話を中心に将の役割と軍令の重さを説く。剣を差し出された呉起は、将の仕事は危難に臨んで迷いを断ち、兵の向かう先を指すことで、剣一本の働きではないと退ける。そして有名な逸話が続く。開戦前に功を焦って敵の首を二つ取ってきた兵を、呉起は軍吏の諫めも聞かずに斬った。有能であることは認めるが、命令によらない行動は許さないというのである。一人の勇が全軍の統制を崩すことを恐れた、尉繚子の厳しい軍令観を象徴する話である。今の組織でこれをそのまま真似ることはできないが、成果を上げても勝手な行動を放置すればチームの規律が崩れるという教訓は、よく考える価値がある。

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