尉繚子 / 經卒令
經卒者,以經令分之為三分焉:左軍蒼旗,卒戴蒼羽;右軍白旗,卒戴白羽;中軍黄旗,卒戴黄羽。卒有五章:前一行蒼章,次二行赤章,次三行黄章,次四行白章,次五行黑章。次以經卒,亡章者有誅。前一五行,置章于首;次二五行,置章于項;次三五行,置章于胷;次四五行,置章于腹;次五五行,置章于腰。如此,卒無非其吏,吏無非其卒。見非而不詰,見亂而不禁,其罪如之。鼓行交鬭,則前行進為犯難,後行退為辱衆。踰五行而前者有賞,踰五行而後者有誅,所以知進退先後,吏卒之功也。故曰:「鼓之前如雷霆,動如風雨,莫敢當其前,莫敢躡其後。」言有經也。
新字:経卒者,以経令分之為三分焉:左軍蒼旗,卒戴蒼羽;右軍白旗,卒戴白羽;中軍黄旗,卒戴黄羽。卒有五章:前一行蒼章,次二行赤章,次三行黄章,次四行白章,次五行黒章。次以経卒,亡章者有誅。前一五行,置章于首;次二五行,置章于項;次三五行,置章于胸;次四五行,置章于腹;次五五行,置章于腰。如此,卒無非其吏,吏無非其卒。見非而不詰,見乱而不禁,其罪如之。鼓行交闘,則前行進為犯難,後行退為辱衆。踰五行而前者有賞,踰五行而後者有誅,所以知進退先後,吏卒之功也。故曰:「鼓之前如雷霆,動如風雨,莫敢当其前,莫敢躡其後。」言有経也。
書き下し
経卒とは、経令を以て之を分かちて三分と為す。左軍は蒼旗、卒は蒼羽を戴く。右軍は白旗、卒は白羽を戴く。中軍は黄旗、卒は黄羽を戴く。卒に五章有り。前一行は蒼章、次二行は赤章、次三行は黄章、次四行は白章、次五行は黒章。次するに経卒を以てし、章を亡ふ者は誅有り。前一五行は、章を首に置く。次二五行は、章を項に置く。次三五行は、章を胸に置く。次四五行は、章を腹に置く。次五五行は、章を腰に置く。此くの如くすれば、卒は其の吏に非ざるは無く、吏は其の卒に非ざるは無し。非を見て詰めず、乱を見て禁ぜざれば、其の罪之の如し。鼓行して交闘すれば、則ち前行の進むを難を犯すと為し、後行の退くを衆を辱むと為す。五行を踰えて前む者は賞有り、五行を踰えて後るる者は誅有り、進退先後を知る所以にして、吏卒の功なり。故に曰く、「之を鼓して前むこと雷霆の如く、動くこと風雨の如く、敢へて其の前に当たる莫く、敢へて其の後を躡む莫し」と。経有るを言ふなり。
現代語訳
経卒とは、経令(編成の規則)によって兵を三つに分けることである。左軍は青い旗で、兵は青い羽を着ける。右軍は白い旗で、兵は白い羽を着ける。中軍は黄色い旗で、兵は黄色い羽を着ける。兵には五種の記章がある。第一列は青の記章、第二列は赤の記章、第三列は黄の記章、第四列は白の記章、第五列は黒の記章である。この経卒の順に並べ、記章をなくした者は罰する。五列ずつの組のうち、第一の組は記章を頭に着け、第二の組は首すじに着け、第三の組は胸に着け、第四の組は腹に着け、第五の組は腰に着ける。こうすれば、兵が自分の上官を取り違えることはなく、上官が自分の兵を取り違えることもない。違反を見て問いたださず、乱れを見て止めなければ、その罪は違反した者と同じである。太鼓に合わせて進み敵と交戦するとき、前列が進むのは難に立ち向かうことであり、後列が退くのは味方全体を辱めることである。五列を越えて前に出た者には賞があり、五列を越えて後ろに下がった者は罰する。これは進退と前後を明らかにするためであり、吏と兵の功績を知るためでもある。だからこう言う。「太鼓を打てば雷のように前進し、風雨のように動き、あえてその前に立ちはだかる者はなく、あえてその後ろを追う者もない」。これは筋道の立った編成があることを言うのである。
解説
関連する章句
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尉繚子・勒卒令金・鼓・鈴・旗、四者各法有り。之を鼓すれば則ち進み、鼓を重ぬれば則ち撃つ。之を金すれば則ち止まり、金を重ぬれば則ち退く。鈴は、令を伝ふるなり。旗は、之を左に麾けば則ち左し、之を右に麾けば則ち右す、奇兵は則ち是に反す。一鼓一撃して左し、一鼓一撃して右す。一歩に一鼓するは、歩鼓なり。十歩に一鼓するは、趨鼓なり。音絶えざるは、騖鼓なり。商は、将の鼓なり。角は、帥の鼓なり。小鼓は、伯の鼓なり。三鼓同じければ、則ち将・帥・伯其の心一なり。奇兵は則ち是に反す。鼓の次を失ふ者は誅有り、諠譁する者は誅有り、金・鼓・鈴・旗を聴かずして動く者は誅有り。百人にして戦を教へ、教成れば、之を千人に合す。千人教成れば、之を万人に合す。万人教成れば、之を三軍に会す。三軍の衆、分有り合有り、大戦の法を為す。教成れば、之を試みるに閲を以てす。方も亦勝ち、円も亦勝ち、錯斜も亦勝ち、険に臨むも亦勝つ。敵山に在れば、縁りて之に従ふ。敵淵に在れば、没して之に従ふ。敵を求むること亡子を求むるが如く、之に従ひて疑ふこと無し、故に能く敵を敗りて其の命を制す。
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尉繚子・兵教上兵の教は、営を分かち陳に居らしめ、令に非ずして進退する者有れば、教を犯すの罪の如くす。前行の者は前行之を教へ、後行の者は後行之を教へ、左行の者は左行之を教へ、右行の者は右行之を教ふ。教へて五人を挙ぐれば、其の甲首に賞有り。教へざれば教を犯すの罪の如くす。地に羅る者は、自ら其の伍を掲げ、伍内互ひに之を掲ぐれば、其の罪を免る。凡そ伍陳に臨み、若し一人も敵に死を尽くさざる有れば、則ち教ふる者は法を犯す者の罪の如くす。凡そ什は什を保ち、若し一人を亡ひて、九人敵に死を尽くさざれば、則ち教ふる者は法を犯す者の罪の如くす。什より以上、裨将に至るまで、法の若くせざる者有れば、則ち教ふる者は法を犯す者の罪の如くす。凡そ刑罰を明らかにし、勧賞を正すは、必ず兵教の法に在り。将は其の旗を異にし、卒は其の章を異にす。左軍は左肩に章し、右軍は右肩に章し、中軍は胸前に章す。其の章に書して曰く、某甲・某士と。前後の章各五行、尊章は首上に置き、其の次は差ひて之を降す。伍長は其の四人を教へ、板を以て鼓と為し、瓦を以て金と為し、竿を以て旗と為す。鼓を撃てば進み、旗を低くすれば則ち趨り、金を撃てば退く。麾きて之を左にし、麾きて之を右にし、金鼓倶に撃てば坐す。伍長教成れば、之を什長に合す。什長教成れば、之を卒長に合す。卒長教成れば、之を伯長に合す。伯長教成れば、之を兵尉に合す。兵尉教成れば、之を裨将に合す。裨将教成れば、之を大将に合す。大将教成れば、中野に陳し、大表を置くこと三百歩にして一つ。既に陳して表を去り、百歩にして決し、百歩にして趨り、百歩にして騖す。戦を習ひて以て其の節を成し、之が賞罰を為す。尉吏より下、尽く旗有り。戦勝ちて旗を得る者は、各其の得る所の爵を視て、以て賞勧の心を明らかにす。戦勝は威を立つるに在り、威を立つるは力を戮はするに在り、力を戮はするは罰を正すに在り、罰を正す者は賞を明らかにする所以なり。
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尉繚子・分塞令中軍・左・右・前・後軍、皆分地有り、之を方にするに行垣を以てし、而して其の交往を通ずること無し。将に分地有り、帥に分地有り、伯に分地有り、皆其の溝洫を営み、而して其の塞令を明らかにし、百人に非ざれば通ずるを得ること無からしむ。其の百人に非ずして入る者は、伯之を誅す。伯誅せざれば、之と罪を同じくす。軍中縦横の道、百有二十歩にして一府柱を立て、人と地とを量り、柱道相望み、行を禁じ道を清む。将吏の符節に非ざれば、通行するを得ず。采薪芻牧する者は、皆行伍を成す。行伍を成さざる者は、通行するを得ず。吏属に節無く、士に伍無き者は、横門之を誅す。分を地に踰ゆる者は、之を誅す。故に内に令を干し禁を犯すこと無ければ、則ち外に獲ざるの奸無し。
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尉繚子・伍制令軍中の制は、五人を伍と為し、伍は相保つなり。十人を什と為し、什は相保つなり。五十人を属と為し、属は相保つなり。百人を閭と為し、閭は相保つなり。伍に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全伍誅有り。什に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全什誅有り。属に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全属誅有り。閭に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全閭誅有り。吏は什長より以上、左右将に至るまで、上下皆相保つなり。令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざる者は、皆与に罪を同じくす。夫れ什伍相結び、上下相聯なれば、得ざるの奸無く、掲げざるの罪無し。父も以て其の子を私するを得ず、兄も以て其の弟を私するを得ず、而るを況んや国人の舎を聚め食を同じくするもの、烏んぞ能く令を干すを以て相私する者あらんや。
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尉繚子・兵令下諸そ大軍を去りて前禦の備へを為す者は、辺県列侯、各相去ること三五里。大軍の前禦の備へを為すを聞けば、戦へば則ち皆行くを禁ず、内を安んずる所以なり。内卒出でて戍れば、将吏をして旗鼓戈甲を授けしむ。発する日、将吏に後れ及び県の封界を出づる者は、後戍の法を以て坐す。兵辺を戍ること一歳、遂に亡げて代を候たざる者は、法亡軍に比す。父母妻子之を知れば、与に罪を同じくす。知らざれば、之を赦す。卒将吏に後れて大将の所に至ること一日なれば、父母妻子尽く罪を同じくす。卒逃げて家に帰ること一日、父母妻子捕執せず及び言はざれば、亦罪を同じくす。諸そ戦ひて其の将吏を亡ふ者、及び将吏卒を棄てて独り北ぐる者は、尽く之を斬る。前吏其の卒を棄てて北ぐるに、後吏能く之を斬りて其の卒を奪ふ者は、賞す。軍功無き者は、戍ること三歳。三軍大いに戦ひ、若し大将死して、従吏五百人以上敵に死する能はざれば、斬る。大将の左右近卒の陳中に在る者は、皆斬る。余の士卒軍功有る者は、一級を奪ふ。軍功無き者は、戍ること三歳。戦ひて伍人を亡ひ、及び伍人戦死して其の屍を得ざれば、同伍尽く其の功を奪ふ。其の屍を得れば、罪皆赦す。軍の利害は、国の名実に在り。今名は官に在りて、実は家に在り、官は其の実を得ず、家は其の名を得ず。卒を聚めて軍と為すも、空名有りて実無く、外は以て敵を禦ぐに足らず、内は以て国を守るに足らず、此れ軍の給せざる所以、将の威を奪はるる所以なり。臣以謂へらく、卒逃げ帰る者は、同舎の伍人及び吏罰して糧を入れて饒と為し、名づけて軍実と為す、是れ一軍の名有りて、二実の出有り、国内空虚にして、自ら民の歳を竭くす、曷ぞ以て奔北の禍を免れんや。今法を以て逃帰を止め、亡軍を禁ずるは、是れ兵の一勝なり。什伍相連なり、戦闘に及べば則ち卒吏相救ふは、是れ兵の二勝なり。
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尉繚子・束伍令束伍の令に曰く、五人を伍と為し、一符を共にし、将吏の所に収む。伍を亡ひて伍を得る者は、之に当つ。伍を得て亡はざれば、賞有り。伍を亡ひて伍を得ざれば、身は死し家は残はる。長を亡ひて長を得れば、之に当つ。長を得て亡はざれば、賞有り。長を亡ひて長を得ざれば、身は死し家は残はる。復た戦ひて首長を得れば、之を除く。将を亡ひて将を得れば、之に当つ。将を得て亡はざれば、賞有り。将を亡ひて将を得ざれば、地を離れ遁逃するの法に坐す。戦誅の法に曰く、什長は十人を誅するを得、伯長は十長を誅するを得、千人の将は百人の長を誅するを得、万人の将は千人の将を誅するを得、左右将軍は万人の将を誅するを得、大将軍は誅するを得ざる無し。
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