尉繚子 / 原官
官者,事之所主,為治之本也。制者,職分四民,治之分也。貴爵富祿必稱,尊卑之體也。好善罰惡,正比法,會計民之具也。均井地,節賦斂,取與之度也。程工人,備器用,匠工之功也。分地塞要,殄怪禁淫之事也。守法稽㫁,臣下之節也。明法稽驗,主上之操也。明主守,等輕重,臣主之權也。明賞賚,嚴誅責,止奸之術也。審開塞,守一道,為政之要也。下達上通,至聰之聽也。知國有無之數,用其仂也。知彼弱者,強之體也。知彼動者,靜之決也。官分文武,惟王之二術也。俎豆同制,天子之會也。遊說間諜無自入,正議之術也。諸侯有謹天子之禮,君民繼世,承王之命也。更好易常,違王明德,故禮得以伐也。官無事治,上無慶賞,民無獄訟,國無商賈,何王之至也?明舉上達,在王垂聽也。
新字:官者,事之所主,為治之本也。制者,職分四民,治之分也。貴爵富禄必称,尊卑之体也。好善罰悪,正比法,会計民之具也。均井地,節賦斂,取与之度也。程工人,備器用,匠工之功也。分地塞要,殄怪禁淫之事也。守法稽㫁,臣下之節也。明法稽験,主上之操也。明主守,等軽重,臣主之権也。明賞賚,厳誅責,止奸之術也。審開塞,守一道,為政之要也。下達上通,至聰之聴也。知国有無之数,用其仂也。知彼弱者,強之体也。知彼動者,静之決也。官分文武,惟王之二術也。俎豆同制,天子之会也。遊説間諜無自入,正議之術也。諸侯有謹天子之礼,君民継世,承王之命也。更好易常,違王明徳,故礼得以伐也。官無事治,上無慶賞,民無獄訟,国無商賈,何王之至也?明舉上達,在王垂聴也。
書き下し
官なる者は、事の主る所、治を為すの本なり。制なる者は、職もて四民を分かつ、治の分なり。貴爵富禄必ず称ふは、尊卑の体なり。善を好み悪を罰し、比法を正すは、民を会計するの具なり。井地を均しくし、賦斂を節するは、取与の度なり。工人を程(はか)り、器用を備ふるは、匠工の功なり。地を分かち要を塞ぐは、怪を殄(た)ち淫を禁ずるの事なり。法を守り断を稽ふるは、臣下の節なり。法を明らかにし験を稽ふるは、主上の操なり。主守を明らかにし、軽重を等しくするは、臣主の権なり。賞賚を明らかにし、誅責を厳にするは、奸を止むるの術なり。開塞を審らかにし、一道を守るは、政を為すの要なり。下達し上通ずるは、至聡の聴なり。国の有無の数を知るは、其の仂(ろく)を用ふるなり。彼の弱きを知る者は、強の体なり。彼の動くを知る者は、静の決なり。官を文武に分かつは、惟れ王の二術なり。俎豆制を同じくするは、天子の会なり。遊説間諜自ら入る無きは、正議の術なり。諸侯に天子の礼を謹む有り、君民世を継ぐは、王の命を承くるなり。好むを更め常を易へ、王の明徳に違ふは、故に礼以て伐つを得るなり。官に事治無く、上に慶賞無く、民に獄訟無く、国に商賈無きは、何ぞ王の至りなるや。明挙上達するは、王の垂聴に在るなり。
現代語訳
官とは、事を司るもので、政治を行う根本である。制度とは、職によって四民(士・農・工・商)を分けるもので、政治の区分である。高い爵位と厚い俸禄を必ず(功に)見合わせるのは、尊卑の秩序の本体である。善を好み悪を罰し、比法(民を組ごとに比べ合わせる法)を正すのは、民を把握し勘定する道具である。井田の土地を均等にし、租税の取り立てを節度あるものにするのは、取ることと与えることの基準である。職人の仕事量を定め、器具を備えるのは、工匠の働きである。土地を区分し要所を塞ぐのは、怪しいものを絶ち不正を禁じる仕事である。法を守り判断を考え合わせるのは、臣下の節度である。法を明らかにし実際の成果を考え合わせるのは、君主の執るべき道である。君主の守るべきところを明らかにし、(賞罰の)軽重を公平にするのは、君臣の権衡である。賞賜を明らかにし、処罰を厳しくするのは、悪事を止める術である。開くべきと塞ぐべきとを見きわめ、一つの道を守るのは、政治を行う要である。下の意見が上に届き、上の意向が下に通じるのは、最も聡い聞き方である。国の物資の有無の数を知るのは、その余り(十分の一)を用いるためである。相手の弱みを知るのは、強さの本体である。相手の動きを知るのは、静かに構える判断の元である。官を文と武に分けるのは、王の二つの術である。祭器の制度を同じくするのは、天子のもとに諸侯を会同させるためである。遊説の士や間諜が自由に入り込めないのは、正しい議論を守る術である。諸侯が天子への礼を慎み、君主と民が代々を継いでいくのは、王の命を受けているからである。好みを改め常道を変え、王の明徳に背けば、それゆえに礼に基づいて討つことができる。役所に取り扱う事件がなく、上に慶賞を与えることもなく、民に訴訟がなく、国に商人がいない、これはなんと王道の極致であろうか。賢者をはっきり挙げて上に達するようにするのは、王が耳を傾けることにかかっている。
解説
関連する章句
-
尉繚子・治本凡そ人を治むる者は何ぞや。曰く、五穀に非ざれば以て腹を充たすこと無く、絲麻に非ざれば以て形を蓋ふこと無し。故に腹を充たすに粒有り、形を蓋ふに縷有り。夫は芸耨に在り、妻は機杼に在り、民に二事無ければ、則ち儲蓄有り。夫に雕文刻鏤の事無く、女に繡飾纂組の作無し。木器は液し、金器は腥し、聖人は土に飲み、土に食ふ、故に埏埴して以て器と為し、天下に費無し。今や金木の性は寒えざるに、而も繡飾を衣せ、馬牛の性は草を食ひ水を飲むに、而も菽粟を給す。是れ治其の本を失ふなり、而して宜しく之が制を設くべきなり。春夏は夫南畝に出で、秋冬は女布帛を練れば、則ち民困しまず。今裋褐(じゅかつ)形を蔽はず、糟糠腹を充たさざるは、其の治を失へばなり。古は、土に肥磽無く、人に勤惰無し。古人は何をか得て、今人は何をか失ふや。耕すに畝を終へざる有り、織るに日に機を断つ有り、而して奈何ぞ饑寒する。蓋し古の治は行はれ、今の治は止めばなり。夫れ所謂治とは、民をして私無からしむるなり。民に私無ければ、則ち天下一家と為りて、私耕私織無く、其の寒を共に寒え、其の饑を共に饑う。故に如し子十人有るも一飯を加へず、子一人有るも一飯を損せざれば、焉んぞ喧呼耽酒して以て善類を敗る有らんや。民に軽佻有れば、則ち欲心興り、争奪の患起こる。横一夫に生ずれば、則ち民私に飯して儲食有り、私に用ひて儲財有り。民一たび禁を犯して、拘ふるに刑治を以てせば、烏くにか其の人の上たるに在らんや。善政は其の制を執り、民をして私無からしめ、下為る者敢へて私せざれば、則ち非を為す者無し。本に反り理に縁り、一道に出づれば、則ち欲心去り、争奪止み、囹圄空しく、野充ち粟多く、民を安んじ遠きを懐け、外に天下の難無く、内に暴乱の事無し、治の至りなり。蒼蒼の天は、其の極を知る莫し。帝王の君は、誰か能く法則とせん。往世は及ぶべからず、来世は待つべからず、己に求むる者なり。
-
尉繚子・治本所謂天子なる者は、四つあり。一に曰く神明、二に曰く垂光、三に曰く洪敘、四に曰く無敵。此れ天子の事なり。野物は犠牲と為さず、雑学は通儒と為さず。今説く者曰く、「百里の海も、一夫に飲ましむる能はず。三尺の泉も、三軍の渇を止むるに足る」と。臣謂へらく、欲は度無きに生じ、邪は禁無きに生ず。大上は神化し、其の次は物に因り、其の下は民の時を奪ふこと無く、民の財を損すること無きに在り。
-
『商君書』君臣君位に處りて令行われざれば、則ち危うし。五官分かれて常無ければ、則ち亂る。法制設けられて私善行わるれば、則ち民は刑を畏れず。君尊ければ則ち令は行われ、官修まれば則ち常事有り、法制明らかなれば則ち民は刑を畏る。法制明らかならずして、民の令に從うを求むるは、得べからざるなり。民、令に從わずして、君の尊きを求むるは、堯舜の知と雖も、以て治むること能わず。明王の天下を治むるや、法に緣りて治め、功に按じて賞す。凡そ民の疾く戰いて死を避けざる所以の者は、以て爵祿を求むればなり。明君の國を治むるや、士に斬首捕虜の功有らば、必ずその爵は榮とするに足り、祿は食らうに足る。農の廛を離れざる者は、以て二親を養い、軍事に給するに足る。故に軍士は節に死し、而して農民は偷まざるなり。
-
荀子・王制篇官を序す。宰爵は賓客、祭祀、饗食犠牲の牢数を知る。司徒は百宗、城郭、立器の数を知る。司馬は師旅、甲兵、乗白の数を知る。憲命を脩め、詩商を審らかにし、淫声を禁じ、時を以て順脩し、夷俗邪音をして敢えて雅を乱さざらしむるは、大師の事なり。隄梁を脩め、溝澮を通じ、水潦を行らし、水臧を安んじ、時を以て決塞し、歳凶敗水旱と雖も、民をして耘艾する所有らしむるは、司空の事なり。高下を相し、肥墝を視、五種を序し、農功を省み、蓄蔵を謹み、時を以て順脩し、農夫をして樸力にして能寡なからしむるは、治田の事なり。火憲を脩め、山林藪沢の草木、魚鱉、百素を養い、時を以て禁発し、国家をして用に足りて、財物屈きざらしむるは、虞師の事なり。州里を順にし、廛宅を定め、六畜を養い、樹芸を閒え、教化を勧め、孝弟に趨かしめ、時を以て順修し、百姓をして命に順い、郷に処るを安楽ならしむるは、郷師の事なり。百工を論じ、時事を審らかにし、功苦を弁じ、完利を尚び、備用を便にし、雕琢文采をして敢えて家に専ら造らざらしむるは、工師の事なり。陰陽を相し、祲兆を占い、亀を鑽り卦を陳ね、五卜を攘択するを主どり、其の吉凶妖祥を知るは、傴巫跛撃の事なり。採清を脩め、道路を易らかにし、盗賊を謹み、室律を平らかにし、時を以て順修し、賓旅をして安んじて貨財通ぜしむるは、治市の事なり。急を抃え悍を禁じ、淫を防ぎ邪を除き、之を戮するに五刑を以てし、暴悍をして以て変ぜしめ、姦邪作らざらしむるは、司寇の事なり。政教を本とし、法則を正し、兼ね聴きて時に之を稽え、其の功労を度り、其の慶賞を論じ、時を以て慎脩し、百吏をして免め尽くさしめ、衆庶をして偸ならざらしむるは、冢宰の事なり。礼楽を論じ、身行を正し、教化を広め、風俗を美にし、兼ね覆いて之を調一するは、辟公の事なり。道徳を全うし、隆高を致し、文理を綦め、天下を一にし、毫末を振るい、天下をして順比従服せざる莫からしむるは、天王の事なり。故に政事乱るれば、則ち冢宰の罪なり。国家俗を失えば、則ち辟公の過ちなり。天下一ならず、諸侯俗に反けば、則ち天王其の人に非ざるなり。
-
『管子』君臣上是の故に天子善有れば、徳を天に讓る。諸侯善有れば、之を天子に慶す。大夫善有れば、之を君に納る。民善有れば、父に本づき、之を長老に慶す。此れ道法の從りて來たる所、是れ治の本なり。是の故に歲ごとに一たび言う者は、君なり。時ごとに省みる者は、相なり。月ごとに稽うる者は、官なり。四支の力に務め、耕農の業を修めて以て令を待つ者は、庶人なり。是の故に百姓は其の力を父兄の間に量り、其の言を君臣の義に聴きて、官は其の徳能を論じて之を待つ。大夫は官中の事を比べて、其の外を言わず、而して相與に常具を為して以て之に給す。相は要を總ぶる者にして、官は士を謀り、實義の美を量り、疑う所を匡し請う。而して君は其の明府の法瑞を發して以て之を稽え、三階の上に立ち、南面して要を受く。是を以て上に餘日有りて、官は其の任に勝え、時令淫せずして、百姓肅給す。唯だ此れ上に法制有り、下に分職有ればなり。
-
『管子』明法解明主なる者は、下をして力を盡くして法分を守らしむ、故に羣臣は主を尊ぶに務めて敢えて其の家を顧みず。臣主の分明らかに、上下の位審らかなり、故に大臣は各おの其の位に處りて敢えて相貴くせず。亂主は則ち然らず、法制廢れて行われず、故に羣臣は其の家を益すに務むるを得。君臣分無く、上下別無し、故に羣臣は相貴くするに務むるを得。此くの如き者は、朝臣少なきに非ざるなり、衆用を為さざるなり。故に明法に曰く、「國に人無きは、朝臣の衰うるに非ざるなり。家と家と相益するに務めて、君を尊ぶに務めざればなり。大臣は相貴くするに務めて國に任ぜざるなり」と。人主の官を張り吏を置くや、徒だ其の身を尊び、厚く之を奉ずるのみに非ざるなり、之をして主の法を奉じ、主の令を行い、以て百姓を治めて盜賊を誅せしむるなり。是の故に其の任ずる所の官大なれば、則ち爵尊くして祿厚し。其の任ずる所の官小なれば、則ち爵卑くして祿薄し。爵祿なる者は、人主の吏をして官を治めしむる所以なり。亂主の治むるや、尊位に處り、厚祿を受け、與に佼わる所を養いて、官を以て務と為さず。此くの如き者は、則ち官其の能を失う。故に明法に曰く、「小臣祿を持し佼を養いて、官を以て事と為さず、故に官職を失う」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る