韓非子 / 飭令第五十三
刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者來たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
新字:刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者来たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
書き下し
刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者來たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
現代語訳
刑罰を行う際、軽い違反(輕き者)を(あえて)重く罰すれば、軽い違反がまず起こらなくなり、結果として重大な違反(重き者)も起こらなくなる。これを「刑罰を用いて、刑罰の必要性をなくす」という。
解説
コンプライアンスや規律維持の本質。小さなルール違反(輕き者)を「このくらいはいいだろう」と見逃していると、やがて組織の規律は崩壊し、重大な不正(重き者)が発生する。「小さな違反を厳格に処罰する」姿勢(重其輕者)こそが、結果的に重大な違反を防ぐ(刑を去る)最も効果的な抑止力となる。
この章句が説くこと
規律コンプライアンス割れ窓理論抑止力厳罰主義
関連する章句
-
『韓非子』六反第四十六故曰、「重一姦之罪、而止境内之邪。」・・・所謂重刑者、姦之所利者細、而上之所加焉者大也。民不以小利受大罪。故姦必止者也。
-
『韓非子』內儲說上七術第三十殷の法、灰を街に棄つる者を刑す。...仲尼曰く、「...重罰は、人の悪む所なり。而して灰を棄つる無きは、人の易しとする所なり。人をして之の易しとする所を行いて、悪む所に離る無からしむるは、此れ治の道なり。」
-
『韓非子』解老第二十大姦作れば則ち小盗隨い、大姦唱うれば則ち小盜和す。
-
『韓非子』守道第二十六夫れ貪盗も谿に赴きて金を掇らず。谿に赴きて金を掇らば則ち身全からず。
-
『韓非子』六反第四十六故法之道為、前苦而長利。仁之道為、偷楽而後窮。聖人權其輕重、而出其厚。故用法之相忍、而棄仁人之相憐。
-
『韓非子』難三第三十八桓公能く管仲の功を用ひて、鉤を射るの怨みを忘る。文公能く寺人の言を聽きて、祛を斬るの罪を棄つ。... 是れ臣讎するに、而も明燭すこと能わず、多く之に資を假すに、自ら以て賢と為して戒めず。