韓非子 / 六反第四十六
故法之道為、前苦而長利。仁之道為、偷楽而後窮。聖人權其輕重、而出其厚。故用法之相忍、而棄仁人之相憐。
新字:故法之道為、前苦而長利。仁之道為、偷楽而後窮。聖人権其軽重、而出其厚。故用法之相忍、而棄仁人之相憐。
書き下し
故に法の道為る、前に苦しみて長く利あり。仁の道為る、偷楽しみて後窮す。聖人は其の輕重を權りて、す出づ。故に法の相忍ぶを用いて、仁人の相憐むを棄つるなり。
現代語訳
ルール(法)による統治は、最初は厳しくて苦しいが、将来にわたって長く利益が続く。温情(仁)による統治は、一時的には楽だが、後になって行き詰まる。聖人は両者を比較し、利益の厚い方(法)を選ぶ。故に、温情を捨て、ルールに基づく(苦痛を)耐え忍ぶ方策を選ぶ。
解説
決まりに基づいて治めることは、最初のうちは厳しく窮屈で、痛みも伴います。しかし、それを貫けば長い目で見て大きな利益が続きます。反対に、情に流されたやさしさだけの治め方は、初めのうちは楽で心地よいのですが、後になって必ず行き詰まります。韓非は、この両方を比べたうえで、目先の心地よさより将来の大きな利益を選ぶべきだと説きます。家庭でのしつけでも、子供に多少厳しく決まりを守らせるのは親も子も窮屈で辛いものですが、それが後の子供の力になります。反対に、その場しのぎで甘やかしてばかりいると、後になって収拾がつかなくなることが多いものです。今の辛抱を惜しんで甘さを選べば、結局あとで大きなつけを払うことになる、という戒めです。
この章句が説くこと
規律コンプライアンス温情主義長期視点トレードオフ
関連する章句
-
『韓非子』愛臣第四死を赦し刑を宥すは、是を威淫と謂う。
-
『韓非子』內儲說上七術第三十魏の惠王ト皮に謂いて曰く、「子寡人の聲聞を聞く、亦た何如。」...對えて曰く、「臣王の慈惠なるを聞けり。」...王の功亡ぶるに至らん。...夫れ慈とは忍びずして、とは、與うるを好むなり。忍びざれば則ち過ち有るを誅せず、予うるを好めば則ち功有るを待たずして賞す。
-
『韓非子』飭令第五十三刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者來たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
-
『韓非子』備內第十七殺しては必ず當り、罪は赦さず、則ち姦邪、其の私を容るる所無し。
-
『韓非子』難三第三十八桓公能く管仲の功を用いて、鉤を射るの怨みを忘る。文公能く寺人の言を聴きて、祛を斬るの罪を棄つ。... 是れ臣讎するに、而も明燭すこと能わず、多く之に資を假すに、自ら以て賢と為して戒めず。
-
『韓非子』心度第五十四聖人の民を治むるは、本に度り、其の欲を從(ほしいまま)にせしめず、民を利するを期するのみ。故に其の之に刑を與うるは、民を悪む所以に非ず、愛の本なり。