導師導古典を学びたいすべての人に

玉勝間 / 十四の巻 神社の位階の事

同天武天皇ノ御卷に、軍政既訖、將軍等、擧是三神〓言、而奏之。即勅登進三神之品以祠焉と見えたる。品とは、位階を云へるか。もし然らばこれ、神社に位を授奉り給ふことの、物に見えたる始〓と云ふべし。されどこれは、必しも位階にはあらで、唯だ其社の班列をあげ給へるにも有べし。三神の〓言の事は、件の文の上に出たり。

新字:同天武天皇ノ御巻に、軍政既訖、将軍等、挙是三神〓言、而奏之。即勅登進三神之品以祠焉と見えたる。品とは、位階を云へるか。もし然らばこれ、神社に位を授奉り給ふことの、物に見えたる始〓と云ふべし。されどこれは、必しも位階にはあらで、唯だ其社の班列をあげ給へるにも有べし。三神の〓言の事は、件の文の上に出たり。

書き下し

同じく天武天皇の御巻に、軍政既に訖りて、将軍等、この三神の教言を挙げて、これを奏す。即ち勅して三神の品を登げ進めて以て祠るとみえたる。品とは、位階を云えるか。もし然らばこれ、神社に位を授け奉り給うことの、物に見えたる始めと云うべし。されどこれは、必ずしも位階にはあらで、ただその社の班列をあげ給えるにも有るべし。三神の教言の事は、件の文の上に出でたり。

現代語訳

同じ『日本書紀』の天武天皇の巻に、「戦が終わってから、将軍たちがこの三柱の神のお告げを取り上げて奏上した。そこで天皇は勅して三神の品を上げ進めて祭った」と見える。「品」とは位階のことを言ったのであろうか。もしそうならば、これは神社に位を授け申し上げなさったことが書物に見える最初というべきである。けれどもこれは、必ずしも位階ではなく、ただその社の序列を上げなさったということでもあろう。三柱の神のお告げのことは、この文の前に出ている。

解説

神社に位を授ける「神階」の起こりを探った段である。壬申の乱のさなか、高市県主許梅に神が懸かって、事代主神・生霊神・身狭社の神が大海人皇子を守ると告げたことが『日本書紀』に見え、乱の後にその三神の「品」が上げられた。宣長は、この「品」が後の世の正一位・従二位といった神階にあたるなら、それが記録に見える最初の例になると見る一方で、単に社の序列を引き上げただけかもしれないと留保している。神階の制度は奈良時代から平安時代にかけて広く行われ、各地の神社に位が授けられていった。一語の意味を確かめずに制度の起源を断定しない、という慎重な態度がよく表れている。物事の始まりを言うときほど、言葉の意味を後の時代の常識で読んでいないかを疑う必要がある。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る