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玉勝間 / 十一の巻 田舎の神社に高き位階を授らるる事

同記云、同五年九月廿九日、是日被行贈位宣下也。(西宮左大臣高明公)於備前國奉勸請神云云。件社此間有託宣、屬某村人、令成祟給候間、就山科中將顯言朝臣、自地下有申請仁。經奏聞、有勅許被行之、被贈從一位者也。入夜有其儀云云。これは贈位の例とはおぼえず。唯だ神に位を授給へるにこそ有れ。又すべての事のさま、古、にたがひて、近き世のさまなり。

新字:同記云、同五年九月廿九日、是日被行贈位宣下也。(西宮左大臣高明公)於備前国奉勧請神云云。件社此間有託宣、属某村人、令成祟給候間、就山科中将顕言朝臣、自地下有申請仁。経奏聞、有勅許被行之、被贈従一位者也。入夜有其儀云云。これは贈位の例とはおぼえず。唯だ神に位を授給へるにこそ有れ。又すべての事のさま、古、にたがひて、近き世のさまなり。

書き下し

同記に云わく、同五年九月廿九日、この日贈位宣下行わるるなり。(西宮左大臣高明公)備前国において勧請し奉る神と云云。件の社この間託宣有り、某村人に属きて、祟りを成さしめ給い候間、山科中将顕言朝臣に就きて、地下より申し請うる仁有り。奏聞を経て、勅許有りてこれを行わる、従一位を贈らるる者なり。夜に入りてその儀有り云云。これは贈位の例とはおぼえず。ただ神に位を授け給えるにこそ有れ。またすべての事のさま、古に違いて、近き世のさまなり。

現代語訳

同じ記にこうある。文安五年(1448)九月二十九日、この日贈位の宣下が行われた。(西宮左大臣源高明公である。)備前国で勧請してお祭りしている神だという。その社では近ごろ託宣があり、ある村人に取り憑いて祟りをなされたので、山科中将顕言朝臣を通じて、地下(官位のない者)から申請する者があった。天皇に奏上し、勅許があって行われ、従一位を贈られたのである。夜に入ってその儀式があった、とのことである。これは死者に位を贈る贈位の例とは思われない。ただ神に位をお授けになったのである。また、すべての事の有様が古と違っていて、近世のやり方である。

解説

備前国で神として祀られていた源高明に、祟りを鎮めるため従一位が贈られた記事である。源高明は醍醐天皇の皇子で、安和の変で失脚して大宰府へ流された人物である。非業の死を遂げた人の霊を神として祀り、位を贈って鎮める考え方は、菅原道真の天神信仰にも見られる。宣長は、これは人に対する贈位ではなく、神に位を授けたものだと見抜き、さらに村人への託宣から地下の申請、勅許へと進む手続き全体が、古とは違う近い世のやり方だと評している。神の位階は古代にもあったが、宣長は古代の制度と後世の変容とを常に区別して読んだ。同じ名で呼ばれる事柄でも、中身が時代によって変わることを見落とさない態度である。

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