玉勝間 / 十三の巻 天ノ下の諸神おしなべて正六位上に叙せらるる事
文德實錄に、仁壽元年正月甲戌朔庚子、詔、天下諸神、不論有位無位、叙正六位上。
新字:文徳実録に、仁寿元年正月甲戌朔庚子、詔、天下諸神、不論有位無位、叙正六位上。
書き下し
文徳実録に、仁寿元年正月甲戌朔庚子、詔す、天下の諸神、有位無位を論ぜず、正六位上に叙す。
現代語訳
『文徳実録』に、「仁寿元年正月二十七日、詔して、天下の諸々の神を、位があるかないかにかかわらず、正六位上に叙した」とある。
解説
文徳天皇が即位の翌年、全国の神々にいっせいに正六位上の神階を授けたという記事を写した短い段である。古代の朝廷は、人の官人と同じように神にも位階を授け、霊験があったり朝廷に功があったりすると位を上げた。これを神階という。この詔は、それまで位を持たなかった神も含めて、天下の神すべてに一律に位を授けたもので、神々への崇敬を広く示す施策であった。後に神階はしだいに上がり、稲荷や八幡のように正一位に至る神も現れた。神を人の位階制度の中に位置づけるという発想そのものが、律令国家の特色である。宣長は論評していないが、神と朝廷の関わりを示す史料として採ったのであろう。
関連する章句
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『玉勝間』十四の巻 神社の位階の事同じく天武天皇の御巻に、軍政既に訖りて、将軍等、この三神の教言を挙げて、これを奏す。即ち勅して三神の品を登げ進めて以て祠るとみえたる。品とは、位階を云えるか。もし然らばこれ、神社に位を授け奉り給うことの、物に見えたる始めと云うべし。されどこれは、必ずしも位階にはあらで、ただその社の班列をあげ給えるにも有るべし。三神の教言の事は、件の文の上に出でたり。
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『玉勝間』十一の巻 田舎の神社に高き位階を授らるる事同記に云わく、同五年九月廿九日、この日贈位宣下行わるるなり。(西宮左大臣高明公)備前国において勧請し奉る神と云云。件の社この間託宣有り、某村人に属きて、祟りを成さしめ給い候間、山科中将顕言朝臣に就きて、地下より申し請うる仁有り。奏聞を経て、勅許有りてこれを行わる、従一位を贈らるる者なり。夜に入りてその儀有り云云。これは贈位の例とはおぼえず。ただ神に位を授け給えるにこそ有れ。またすべての事のさま、古に違いて、近き世のさまなり。
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『玉勝間』十三の巻 神社の号某明神と云ふ事続後紀、承和十五年のところに、山崎明神と見え、文徳実録、斉衡二年に、吉備津彦名明神など見え、三代実録、仁和二年の宣命には、松尾大明神とも有り。これらより前にも、見えたるようにも覚ゆれども、今さだかには覚えず。又文徳実録、仁寿元年の処に、詔して近江国の散久難度神を以て、明神に列す、三代実録、貞観七年の処に、諸明神の神田に充て奉る、などあるをもて見れば、もろもろの神社の中に、殊に明神と云う列の有りしにやあらむ。
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