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玉勝間 / 六の巻 天の下の政神事をさきとせられし事

職員令に、神祇官を、もろもろの官のはじめに、まづ擧げて、それが次に、太政官を擧られたり。延喜式も、同くはじめに神祇式、次に太政官式なり、後の世ながら、北畠ノ准后の職原抄も、令にならひて、ついでられたり。そもそもよろづの事、さばかり唐の國ぶりをならひ給へりし御世にしも、斯く有りしは、さすがに神の御國のしるしにて、いともいとも尊く、めでたきわざになむ有ける。世ノ中は何につけても、此心ばへこそ有らまほしけれ。

新字:職員令に、神祇官を、もろもろの官のはじめに、まづ挙げて、それが次に、太政官を挙られたり。延喜式も、同くはじめに神祇式、次に太政官式なり、後の世ながら、北畠ノ准后の職原抄も、令にならひて、ついでられたり。そもそもよろづの事、さばかり唐の国ぶりをならひ給へりし御世にしも、斯く有りしは、さすがに神の御国のしるしにて、いともいとも尊く、めでたきわざになむ有ける。世ノ中は何につけても、此心ばへこそ有らまほしけれ。

書き下し

職員令に、神祇官を、もろもろの官のはじめに、まず挙げて、それが次に、太政官を挙げられたり。延喜式も、同じくはじめに神祇式、次に太政官式なり、後の世ながら、北畠の准后の職原抄も、令にならいて、ついでられたり。そもそもよろずの事、さばかり唐の国ぶりをならい給えりし御世にしも、かく有りしは、さすがに神の御国のしるしにて、いともいとも尊く、めでたきわざになむ有りける。世の中は何につけても、この心ばえこそ有らまほしけれ。

現代語訳

職員令に、神祇官をもろもろの官の初めにまず挙げて、その次に太政官を挙げておられる。延喜式も同じく、初めに神祇式、次に太政官式である。後の世のことながら、北畠准后(北畠親房)の職原抄も、令にならって順序を立てておられる。そもそも何事も、あれほど唐の国のやり方をお習いになった御代であるのに、このようであったのは、さすがに神の御国のしるしであって、まことに尊く、めでたいことである。世の中は何につけても、この心ばえこそあってほしいものだ。

解説

律令の官制で神祇官が太政官より先に挙げられていることを、神事を政治の第一とした証として称えた一段である。唐の制度では祭祀の官は尚書省などの下に置かれるが、日本の職員令は神祇官を太政官と並べ、しかも先に挙げた。延喜式も神祇式から始まり、南北朝時代の北畠親房の職原抄もその順を守る。宣長は、万事を唐に倣った時代でさえこうであったのは神の御国の証だ、と深く感じ入る。国学の立場からの称賛であり、時代の言葉として読むべきところだが、制度の条文の並び順という形に、その国が何を最も重んじたかが表れる、という見方自体は今も有効である。何を先に置くかは、何を大事にするかの表明である。

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