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玉勝間 / 十三の巻 十をつつと云ふ事

文選の古き訓に、十をツツと訓めり。下のつは、一つ二つなどのつなり、上のつは、とと通ふ音なれば、卽チ十なり。俗に、つづやはたちと云ひて、つづを、十九の事とするはいかが。こはもと十や廿と云ひしを、十九廿に誤れるか。

新字:文選の古き訓に、十をツツと訓めり。下のつは、一つ二つなどのつなり、上のつは、とと通ふ音なれば、即チ十なり。俗に、つづやはたちと云ひて、つづを、十九の事とするはいかが。こはもと十や廿と云ひしを、十九廿に誤れるか。

書き下し

文選の古き訓に、十をツツと訓めり。下のつは、一つ二つなどのつなり、上のつは、とと通う音なれば、即ち十なり。俗に、つづやはたちと云いて、つづを、十九の事とするはいかが。こはもと十や廿と云いしを、十九廿に誤れるか。

現代語訳

『文選』の古い訓に、「十」を「つつ」と訓んでいる。下の「つ」は「一つ」「二つ」などの「つ」で、上の「つ」は「と」と通う音なので、すなわち「と(十)」である。世間で「つづや二十歳」と言って、「つづ」を十九のこととするのはどうであろうか。これはもともと「十や二十」と言っていたのを、「十九、二十」と取り違えたのであろうか。

解説

数の「十」の古い訓み「つつ」をめぐる考証である。『文選』の古い訓点で「十」を「つつ」と読んでいることから、宣長は、下の「つ」は「ひとつ」「ふたつ」の「つ」、上の「つ」は「とお」の「と」が通じたものだと分析する。そして世間で「つづやはたち」と言って「つづ」を十九歳と解しているのは、もとは「十や二十」の意味だったのを取り違えたのではないかと疑う。「つづ」を十九とする俗説は、「つ」の付く数が九までであることから来たともいわれる。漢籍に付けられた古い訓点は、平安時代の日本語を伝える貴重な資料であり、宣長はそこから和語の数詞の古い姿を掘り起こしている。身近な言い回しの意味も、古い資料に照らすと違って見えてくる。

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