玉勝間 / 十三の巻 しづり
綺語抄に、「おく山のしづりのしたの袖なれや、思ひの外にぬれぬと思へば、四條大納言歌枕に、木にふりたる雪の、落るを、しづりと云なり。
新字:綺語抄に、「おく山のしづりのしたの袖なれや、思ひの外にぬれぬと思へば、四条大納言歌枕に、木にふりたる雪の、落るを、しづりと云なり。
書き下し
綺語抄に、「おく山のしずりのしたの袖なれや、思いの外にぬれぬと思えば、四条大納言歌枕に、木にふりたる雪の、落つるを、しずりと云うなり。
現代語訳
『綺語抄』に、「奥山の、しずりの下にいる人の袖なのだろうか、思いがけず濡れてしまったと思うと」の歌を挙げ、『四条大納言歌枕』に、木に降り積もった雪が落ちるのを「しずり」と言うのである、とある。
解説
歌語「しずり」の意味を、平安時代の歌学書『綺語抄』とそこに引かれた藤原公任の『四条大納言歌枕』によって示した短い段である。「しずり」は木の枝に積もった雪が落ちること、またその雪をいう。引かれた歌は、奥山で枝から落ちる雪に思いがけず濡れる袖に、思わぬ恋の涙をたとえたものであろう。「しずり雪」は今も冬の季語として使われる。宣長はこの巻で歌語の意味や語形をいくつも取り上げており、古い歌学書の記述を拾い集めて、歌を詠み、読むための手がかりとしている。一語の意味が分かると、歌の情景が冬の山の静けさとともに目に浮かんでくる。自然の小さな現象に名を与えてきた日本語の細やかさを感じさせる段である。
関連する章句
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