玉勝間 / 十二の巻 勅旨田
同記に、寛弘九年四月四日云云、左中辨談云、昨日有故院御處分云云、中宮東宮、勅旨田各百町、男女一品宮、八十町、御乳母等、廿町とあり。これによりて思へば、勅旨田とは、殊なる勅旨によりて賜ふ田を云ふか。又これは、もとより勅旨田と云ふあるを、御處分にせられたる由にや。猶尋ぬべし。
新字:同記に、寛弘九年四月四日云云、左中弁談云、昨日有故院御処分云云、中宮東宮、勅旨田各百町、男女一品宮、八十町、御乳母等、廿町とあり。これによりて思へば、勅旨田とは、殊なる勅旨によりて賜ふ田を云ふか。又これは、もとより勅旨田と云ふあるを、御処分にせられたる由にや。猶尋ぬべし。
書き下し
同じ記に、寛弘九年四月四日云云、左中弁談じて云う、昨日故院の御処分有り云云、中宮・東宮、勅旨田各百町、男女一品宮、八十町、御乳母等、廿町とあり。これによりて思えば、勅旨田とは、殊なる勅旨によりて賜う田を云うか。またこれは、もとより勅旨田と云うあるを、御処分にせられたる由にや。なお尋ぬべし。
現代語訳
同じ記(小右記)に「寛弘九年(1012)四月四日……左中弁が語って言うには、昨日、故院(一条院)の遺産の御処分があった……中宮と東宮には勅旨田をそれぞれ百町、男女の一品宮には八十町、御乳母たちには二十町」とある。これによって考えると、勅旨田とは、特別な勅旨によって賜る田を言うのか。それともこれは、もともと勅旨田というものがあったのを、御処分(遺産分け)に充てられたということか。なお調べるべきである。
解説
平安時代の「勅旨田」という土地制度の語について、『小右記』の記事から意味を探った段である。一条院の崩御後、その遺産が中宮・東宮・皇子女・乳母たちに分けられ、勅旨田が何百町と配分された。宣長は、勅旨田とは特別の勅旨によって賜る田のことなのか、それとも既に勅旨田として存在していた田を遺産分けに充てたのか、と二つの解釈を立て、結論は出さずに「なお尋ぬべし」と結ぶ。勅旨田は実際には、天皇の勅旨によって開墾された皇室の財源となる田で、後者の理解に近い。分からないことに無理な答えを与えず、問いとして残しておく。こうした未完の書き付けが多いところに、玉勝間が研究の手控えとしての性格を持っていることが見える。
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『玉勝間』十二の巻 客殿小右記に、斎院に客殿に於て参る云云。
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