玉勝間 / 十二の巻 綿子
童蒙抄に、「しらぬひの筑紫のわたは身につけていまだはきねどあたたかに見ゆ、萬葉第三にあり。しらぬひのとは、筑紫の綿のひろく善きを、きぬにも入れずして、唯だ縫て昔は著けり。今やうも、さるべきやむことなき人など、さて着る事、あまた聞ゆべしとあり。しらぬひの說は、云ふにも足らぬひがことなれど、綿を衣に入れずして今も着ると有るは、今の世にいはゆるわたこのさまなるべし。
新字:童蒙抄に、「しらぬひの筑紫のわたは身につけていまだはきねどあたたかに見ゆ、万葉第三にあり。しらぬひのとは、筑紫の綿のひろく善きを、きぬにも入れずして、唯だ縫て昔は著けり。今やうも、さるべきやむことなき人など、さて着る事、あまた聞ゆべしとあり。しらぬひの説は、云ふにも足らぬひがことなれど、綿を衣に入れずして今も着ると有るは、今の世にいはゆるわたこのさまなるべし。
書き下し
童蒙抄に、しらぬいの筑紫のわたは身につけていまだはきねどあたたかに見ゆ、万葉第三にあり。しらぬいのとは、筑紫の綿のひろく善きを、きぬにも入れずして、ただ縫いて昔は着けり。今ようも、さるべきやんごとなき人など、さて着る事、あまた聞ゆべしとあり。しらぬいの説は、云うにも足らぬひがことなれど、綿を衣に入れずして今も着ると有るは、今の世にいわゆるわたこのさまなるべし。
現代語訳
『童蒙抄』に「しらぬひの筑紫の綿は身につけてまだ着たことはないが、暖かそうに見える——万葉集巻三にある。『しらぬひの』とは、筑紫の綿の広くて良いものを、衣にも入れずにただ縫って、昔は身に着けたのである。今の風でも、しかるべき高貴な人などがそうして着ることが、多く聞かれるはずだ」とある。「しらぬひ」の説は言うにも足りない誤りだが、綿を衣に入れずに今も着るとあるのは、今の世にいう「綿子(わたこ)」の様子であろう。
解説
関連する章句
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