導師導古典を学びたいすべての人に

玉勝間 / 十一の巻 どら島

そこたち賢くて、近づかずして逃げたればこそ、命もあれ、近よりなば、百千の弓矢ありとも、彼等にとりつかれなば、かなはずして、殺されなましとぞ語りける。此事は、鎭西の人京にのぼりたるが、語りけるを、聞つぎて語り傳へたるとなり。

新字:そこたち賢くて、近づかずして逃げたればこそ、命もあれ、近よりなば、百千の弓矢ありとも、彼等にとりつかれなば、かなはずして、殺されなましとぞ語りける。此事は、鎮西の人京にのぼりたるが、語りけるを、聞つぎて語り伝へたるとなり。

書き下し

そこたち賢くて、近づかずして逃げたればこそ、命もあれ、近よりなば、百千の弓矢ありとも、彼らにとりつかれなば、かなわずして、殺されなましとぞ語りける。この事は、鎮西の人京にのぼりたるが、語りけるを、聞きつぎて語り伝えたるとなり。

現代語訳

「あなたがたは賢くも、近づかずに逃げたからこそ命があるのだ。近寄っていたら、百千の弓矢があったとしても、彼らに取り付かれたら、かなわずに殺されてしまったであろう」と語った。この事は、鎮西の人で京に上った者が語ったのを、聞き継いで語り伝えたのだということである。

解説

度羅島の話の結びである。老人は、近づかずに逃げたからこそ命拾いしたのだ、取り付かれれば百千の弓矢があってもかなわなかったと語る。そして話の末尾には、九州から京に上った人の語りを聞き継いで伝えたという、説話集に特有の伝承の経路が記されている。『今昔物語集』の話の多くは、こうして誰それが語ったのを聞き伝えたという形をとり、話の確かさを保証しようとする。宣長がこの結びまで写したのは、話そのものの真偽よりも、それがどのように伝わってきたかに目を向けていたからであろう。噂や見聞が人から人へ渡り、京で書き留められて残る。情報の出どころと伝わり方を確かめる姿勢は、今のニュースの受け取り方にも通じる。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る