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玉勝間 / 十一の巻 いはゆる御所詞

同書に、內裏仙洞には、一切の食物に、異名を付て被召事也。一向不存知者、當座に迷惑すべき者也。

新字:同書に、内裏仙洞には、一切の食物に、異名を付て被召事也。一向不存知者、当座に迷惑すべき者也。

書き下し

同書に、内裏仙洞には、一切の食物に、異名を付けて召さるる事なり。一向存知せざる者は、当座に迷惑すべき者なり。

現代語訳

同じ書に、内裏や仙洞御所では、あらゆる食べ物に別の名を付けて召し上がるのである。まったく知らない者は、その場で困惑してしまうであろう、とある。

解説

宮中の女官たちが用いた「御所言葉」(女房詞)について、『海人藻芥』の記事を引いた短い段である。宮中や上皇の御所では、食べ物をはじめ身の回りの物に独特の呼び名を付けていた。たとえば「おかず」「おでん」「おかか」「しゃもじ」などは、もとはこうした女房詞から出て、今では一般の言葉になっている。知らない者はその場で戸惑うだろう、という一言からは、言葉づかいがそのまま宮廷の内と外を分ける目印になっていたことがわかる。宣長は言葉の成り立ちに深い関心を寄せ、古語だけでなく、後世に生まれた言葉の由来も書き留めた。今ふだん使っている言葉の中にも、特定の場で生まれた符丁が紛れ込んでいるのである。

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