導師導古典を学びたいすべての人に

玉勝間 / 十の巻 賀茂行幸社司勧賞

同記云、嘉保二年四月十五日、今日賀茂行幸也、云云。裏書云、賀茂行幸、上下社司勸賞、上社司(九人)神主從五位下賀茂縣主成繼、(讓外甥藤原政季)禰宜從五位下同安成、(讓外甥源保)祝從五位下同成季、(讓舅父藤原行季)權禰宜從五位下同重助、(讓漆國守)權祝從五位下同成長、(讓舅父惟宗親持)片岡禰宜從五位下同成定、(讓外舅紀資宗)同祝從五位下同成賴、(讓藤原爲包)貴布禰禰宜從五位下同成忠、(讓平正經)同祝從五位下同成氏、(讓藤原宗政)下社司(五人)、禰宜正五位下鴨縣主惟季、(自叙四位)祝從五位下同伊房、(讓息男伊俊)權禰宜從五位下同職通、(讓藤原實俊)川合禰宜從五位下同經貞、同祝從五位下同惟輔、(讓伴季兼)已上十四人、倍加一階、下社權禰宜從五位下季長、依重服漏勸賞、(追讓代官伊長、有社司奏狀)藏人少納言後日云、代官惟長叙爵、又季長可有勸賞由、追有宣旨者。

新字:同記云、嘉保二年四月十五日、今日賀茂行幸也、云云。裏書云、賀茂行幸、上下社司勧賞、上社司(九人)神主従五位下賀茂県主成継、(譲外甥藤原政季)祢宜従五位下同安成、(譲外甥源保)祝従五位下同成季、(譲舅父藤原行季)権祢宜従五位下同重助、(譲漆国守)権祝従五位下同成長、(譲舅父惟宗親持)片岡祢宜従五位下同成定、(譲外舅紀資宗)同祝従五位下同成頼、(譲藤原為包)貴布祢祢宜従五位下同成忠、(譲平正経)同祝従五位下同成氏、(譲藤原宗政)下社司(五人)、祢宜正五位下鴨県主惟季、(自叙四位)祝従五位下同伊房、(譲息男伊俊)権祢宜従五位下同職通、(譲藤原実俊)川合祢宜従五位下同経貞、同祝従五位下同惟輔、(譲伴季兼)已上十四人、倍加一階、下社権祢宜従五位下季長、依重服漏勧賞、(追譲代官伊長、有社司奏状)蔵人少納言後日云、代官惟長叙爵、又季長可有勧賞由、追有宣旨者。

書き下し

同じ記に云う、嘉保二年四月十五日、今日賀茂行幸なり、云々。裏書に云う、賀茂行幸、上下社司の勧賞、上社司(九人)神主従五位下賀茂県主成継、(外甥藤原政季に譲る)禰宜従五位下同安成、(外甥源保に譲る)祝従五位下同成季、(舅父藤原行季に譲る)権禰宜従五位下同重助、(漆国守に譲る)権祝従五位下同成長、(舅父惟宗親持に譲る)片岡禰宜従五位下同成定、(外舅紀資宗に譲る)同祝従五位下同成頼、(藤原為包に譲る)貴布禰禰宜従五位下同成忠、(平正経に譲る)同祝従五位下同成氏、(藤原宗政に譲る)下社司(五人)、禰宜正五位下鴨県主惟季、(自ら四位に叙す)祝従五位下同伊房、(息男伊俊に譲る)権禰宜従五位下同職通、(藤原実俊に譲る)川合禰宜従五位下同経貞、同祝従五位下同惟輔、(伴季兼に譲る)已上十四人、倍して一階を加う、下社の権禰宜従五位下季長、重服に依りて勧賞に漏る、(追って代官伊長に譲る、社司の奏状有り)蔵人少納言後日に云う、代官惟長爵に叙す、また季長勧賞有るべき由、追って宣旨有り、てえり。

現代語訳

同じ記(中右記)にいう。「嘉保二年四月十五日、今日は賀茂行幸である」云々。裏書にいう。「賀茂行幸における上下両社の社司への勧賞(褒賞)。上社の社司(九人)。神主・従五位下賀茂県主成継(外甥の藤原政季に譲る)、禰宜・従五位下同安成(外甥の源保に譲る)、祝・従五位下同成季(舅父の藤原行季に譲る)、権禰宜・従五位下同重助(漆国守に譲る)、権祝・従五位下同成長(舅父の惟宗親持に譲る)、片岡社の禰宜・従五位下同成定(外舅の紀資宗に譲る)、同祝・従五位下同成頼(藤原為包に譲る)、貴布禰社の禰宜・従五位下同成忠(平正経に譲る)、同祝・従五位下同成氏(藤原宗政に譲る)。下社の社司(五人)。禰宜・正五位下鴨県主惟季(自ら四位に叙される)、祝・従五位下同伊房(息子の伊俊に譲る)、権禰宜・従五位下同職通(藤原実俊に譲る)、川合社の禰宜・従五位下同経貞、同祝・従五位下同惟輔(伴季兼に譲る)。以上十四人は、それぞれ位を一階加える。下社の権禰宜・従五位下季長は、重い喪に服していたため勧賞から漏れた(のちに代官の伊長に譲る。社司の奏状があった)。蔵人少納言が後日言うには、代官惟長が叙爵し、また季長にも勧賞があるべき旨、追って宣旨があった、とのことである。」

解説

天皇の賀茂社行幸に際して、上賀茂・下鴨両社の神職に与えられた褒賞の一覧を中右記の裏書から写した段である。上社九人、下社五人の社司それぞれに位を一階加えるという勧賞で、多くの者がその昇進を親族や縁者に譲っている。外甥、舅父、息子、あるいは他氏の者へと、括弧の中に譲り先が細かく記される。自分はすでに相応の位にあるため、恩賞を身内の叙位に振り向けるという、当時の貴族社会の慣行がよく分かる。宣長は解説を加えていないが、神社と朝廷の関係、神職の家々の結びつきを具体的に示す資料として書き留めたのだろう。褒賞を身内の昇進に回すという仕組みは、家の存続を最優先した社会の論理を映している。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る