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玉勝間 / 十の巻 なごり

六帖に、「うつくしと見るたびごとになでしこの花のなごりは惜しくやはあらぬ。此なごりは、近き世に云ふなごりの意に聞えたり。

書き下し

六帖に、「うつくしと見るたびごとになでしこの花のなごりは惜しくやはあらぬ。このなごりは、近き世に云うなごりの意に聞えたり。

現代語訳

古今和歌六帖に、「かわいらしいと見るたびごとに、なでしこの花の名残は惜しくないことがあろうか(惜しいものだ)」とある。この「なごり」は、近い世に言う「なごり」の意味に聞こえる。

解説

「なごり」という語の意味の移り変わりに目を留めた短い段である。なごりはもともと、波が引いた後に残る水や、風が止んだ後もしばらく立つ波など、物事が過ぎ去った後に残る気配を言う語だったとされる。宣長は古今和歌六帖のなでしこの歌を挙げ、ここの「なごり」は、別れを惜しむ気持ちや過ぎたものへの心残りという、近世に普通に使われる意味に聞こえると指摘する。今の用法がすでに平安の歌に芽生えていたということである。言葉は一気に変わるのではなく、ある時期には古い意味と新しい意味が重なり合って使われる。一首の歌の中にその重なりを見つける読みの細かさが、この短い段に表れている。

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