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玉勝間 / 十の巻 師をとると云ふ事

源氏物がたりの紅葉賀ノ卷に、舞の師どもなど、世になべてならぬをとりつつ、おのおの籠りゐてなん習ひけると有り。世の言に、師匠をとる、弟子をとると云ふも、古き事なりけり。

新字:源氏物がたりの紅葉賀ノ巻に、舞の師どもなど、世になべてならぬをとりつつ、おのおの籠りゐてなん習ひけると有り。世の言に、師匠をとる、弟子をとると云ふも、古き事なりけり。

書き下し

源氏物がたりの紅葉賀の巻に、舞の師どもなど、世になべてならぬをとりつつ、おのおの籠りいてなん習いけると有り。世の言に、師匠をとる、弟子をとると云うも、古き事なりけり。

現代語訳

源氏物語の紅葉賀の巻に、「舞の師匠たちなども、世に並々でない者を選び取っては、それぞれ籠もって習ったのである」とある。世間の言葉で「師匠をとる」「弟子をとる」と言うのも、古いことなのであった。

解説

源氏物語紅葉賀の巻の一文から、「師をとる」という言い回しの古さを確かめた短い段である。朱雀院への行幸に向けて、公達が並々でない舞の師を選んで迎え、それぞれ籠もって稽古したという場面で、「師どもをとる」と書かれている。宣長は、今の世で「師匠をとる」「弟子をとる」と言うのが、平安時代にすでにあった言い方だと気づいて書き留めた。宣長自身、賀茂真淵を師にとり、のちに鈴屋で多くの弟子をとった人であった。師弟の関係を「とる」と言うのは、選び取る能動の行為として捉える言い方で、良い師を探し求めることの大切さも示している。学ぶ人は受け身で師を待つのではなく、師を選び取るものなのである。

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