玉勝間 / 九の巻 相撲前二日の儀
同書、相撲先二日の儀のところに、次相撲人進出、列-立御前、大將隨天氣仰云、東向分、次仰北向、次仰罷入、次相撲、と有り。今の世のいはゆる土俵入は、これに似たり。
新字:同書、相撲先二日の儀のところに、次相撲人進出、列-立御前、大将随天気仰云、東向分、次仰北向、次仰罷入、次相撲、と有り。今の世のいはゆる土俵入は、これに似たり。
書き下し
同書、相撲の先二日の儀のところに、次に相撲人進み出でて、御前に列立す、大将天気に随いて仰せて云う、東に向きて分かれよ、次に北に向けと仰す、次に罷り入れと仰す、次に相撲す、と有り。今の世のいわゆる土俵入りは、これに似たり。
現代語訳
同じ書(『北山抄』)の、相撲の二日前の儀式のところに、「次に相撲人が進み出て、御前に並び立つ。大将が天皇のご意向に従って『東に向いて分かれよ』と命じ、次に『北に向け』と命じ、次に『退出せよ』と命じ、次に相撲をとる」とある。今の世のいわゆる土俵入りは、これに似ている。
解説
江戸時代の相撲の「土俵入り」に似た所作が、平安時代の宮中の相撲にすでにあったことを示した段である。宮中では毎年七月に相撲の節会が行われ、諸国から集められた相撲人が天皇の前で技を競った。『北山抄』によれば、取組に先立って相撲人が御前に並び立ち、大将の号令で東を向き、北を向き、いったん退いてから相撲をとったという。力士がそろって姿を見せ、向きを変えて礼を示す形は、確かに土俵入りを思わせる。宣長の時代、勧進相撲は町の人々の大きな楽しみであった。庶民の娯楽の中に、宮廷の古い儀式の面影を見つけ出す目が、この一段を書かせたのである。
関連する章句
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