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玉勝間 / 九の巻 あやかる

あやかると云ふ詞、拾遺集雜戀に、「風はやみ峰の葛葉のともすればあやかりやすき人のこころか。

新字:あやかると云ふ詞、拾遺集雑恋に、「風はやみ峰の葛葉のともすればあやかりやすき人のこころか。

書き下し

あやかると云う詞、拾遺集雑恋に、風はやみ峰の葛葉のともすればあやかりやすき人のこころか。

現代語訳

「あやかる」という言葉は、『拾遺集』雑恋の部に「風が速いので、峰の葛の葉がともすれば揺れ動くように、ともすれば移ろいやすい人の心であることよ」とある。

解説

「あやかる」という言葉の古い用例を、『拾遺集』の一首から示した段である。今あやかるといえば、幸運な人に似て自分もそうなりたいと願う意味で使うが、この歌では、風に揺れる葛の葉のように心が揺れ動き、移ろいやすいことを言っている。葛の葉は風に吹かれると白い裏を見せて翻ることから、心変わりの譬えによく詠まれた。もとは揺れ動く、他のものに影響されて変わる、という意味の言葉が、やがて良いものに感化されて似るという意味に移っていったと考えられる。宣長は歌一首を掲げるだけだが、今の言葉と古い言葉の意味の隔たりを、読み手自身に気づかせようとしているのである。

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