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玉勝間 / 九の巻 かごと云ふ乗リ物の名

今川ノ貞世が、鹿苑院義滿ノ大將軍の、嚴島詣の記に、御前の濱の鳥井のほとりより、かごにて御船にうつらせ給へりと云へり。

新字:今川ノ貞世が、鹿苑院義満ノ大将軍の、厳島詣の記に、御前の浜の鳥井のほとりより、かごにて御船にうつらせ給へりと云へり。

書き下し

今川の貞世が、鹿苑院義満の大将軍の、厳島詣の記に、御前の浜の鳥井のほとりより、かごにて御船にうつらせ給えりと云えり。

現代語訳

今川貞世が、鹿苑院義満の大将軍(足利義満)の厳島参詣を記した紀行に、「御前の浜の鳥居のあたりから、駕籠に乗って御船にお移りになった」と書いている。

解説

乗り物の「かご(駕籠)」という名が、室町時代の初めにはもう使われていたことを示した段である。今川貞世は了俊の号で知られる武将で歌人、九州探題を務めた。足利義満が厳島神社に参詣した折に随行し、その紀行を書き残した。そこに、鳥居のあたりから駕籠で船に移ったとある。駕籠は江戸時代には町でも街道でも誰もが目にする乗り物であったが、その名がいつから文献に見えるかは、案外知られていなかった。宣長は、身近な物の名の古い用例を見つけるたびに書き留めている。物の歴史は、その名が最初に記された箇所から確かめるのが確実だからである。

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