玉勝間 / 九の巻 かたみ恨み
かたみうらみと云ふ詞、保元物語に見えたり。
書き下し
かたみうらみと云う詞、保元物語に見えたり。
現代語訳
「かたみうらみ」(互いに恨み合うこと)という言葉が、『保元物語』に見えている。
解説
「かたみうらみ」という一語の用例だけを書き留めた、玉勝間でもとりわけ短い段である。「かたみ」は互いに、という意味の古い言葉で、「かたみに」の形でよく用いられる。それが恨みと結びついて、互いに恨み合うことを言う。『保元物語』は、保元元年(1156)に崇徳上皇と後白河天皇の兄弟が争い、摂関家や武士の一族も親子兄弟が敵味方に分かれた保元の乱を描く軍記である。身内同士が恨み合う物語に、この言葉が現れるのはふさわしい。宣長は言葉を集める時、意味を説明しなくても、どの書に見えるかを記しておくだけで後の考証に役立つと考えた。小さな用例の記録が、辞書のない時代の辞書の役を果たしている。
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