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玉勝間 / 八の巻 ほうしだてら

俗に女などの似つかはしからぬわざするを、女たてらと云ふことば有り。狹衣の物語に、或法師の、女を盜みて、車に乘りて物する事を、ほうしだてら、斯くあながちなるわざをし給へば、と見えたり。

新字:俗に女などの似つかはしからぬわざするを、女たてらと云ふことば有り。狭衣の物語に、或法師の、女を盗みて、車に乗りて物する事を、ほうしだてら、斯くあながちなるわざをし給へば、と見えたり。

書き下し

俗に女などの似つかわしからぬわざするを、女たてらと云うことば有り。狭衣の物語に、或る法師の、女を盗みて、車に乗りて物する事を、ほうしだてら、斯くあながちなるわざをし給えば、と見えたり。

現代語訳

俗に、女などが似つかわしくないことをするのを「女だてら」と言う言葉がある。狭衣物語に、ある法師が女を盗み出して車に乗って行くことを、「法師だてらに、このように無理なことをなさるので」と見える。

解説

「女だてらに」という言い方の「だてら」が、古くは法師についても使われていたことを示した段である。「だてら」は、その身分や立場に似合わないことをするのを咎める意を添える語で、宣長の時代には主に「女だてらに」の形で使われていた。宣長は平安時代後期の狭衣物語に、女を盗み出して車で連れ去る法師を「法師だてら」と評した例を見つけた。僧でありながら女を盗むという、身分にあるまじき振る舞いを咎める言葉である。後に「女だてら」の形ばかりが残ったことは、世の中が誰の振る舞いを咎めがちであったかを映しているともいえる。今日では「女だてらに」は性別による決めつけを含む言葉として避けられることが多い。言葉の型の移り変わりから、社会の見方の偏りに気づかせてくれる段である。

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